猫になる。


東京及び九州で『BAR金緑石』さまが委託してくださっています。
姫野自身は、現在、イベント参加予定はありません(すみません)。



クリスマスを目前にして、五年ぶりにできたカノジョにフラれてしまった鳴(なる)は傷心の真っ最中。
カノジョは猫好き。裏腹に、鳴は猫が苦手。
まさか、そんなことが原因で、カノジョとうまくいかなくなってしまうなんて!
次こそはこんな悲劇に遭わぬよう、なんとか猫好きになろう。
そう誓った鳴は、仕事からの帰り道、商店街の片隅にあるお店に向かうようになる。そのお店のショーウィンドウの向こうには、いつも猫がいるからだ。
とりあえず、毎日、見ていたら、少しは猫に慣れるはず。
そして、いつかは猫カフェデビューするのだ!!
そんなある日、鳴は猫の飼い主である尚翔(なおと)に声をかけられる。 最初は戸惑った鳴だけど、尚翔と過ごす時間は、なぜか、とても、心地よくて……。

一応、鳴も尚翔も社会人ですが、大人の雰囲気は、全く、少しも、全然、ありません。
なおかつ、コンビニのシュークリームで「美味しー」ってほっこりしちゃうような、ゴージャスさの欠片もないふたりです。
なんか、もう、口に入れた途端、しゅわわってなくなっちゃいそうな、そんな、ナカミがあるんだかないんだか、それさえもよくわかんないような、ふにゃふにゃしたお話ですが、久しぶりの、お金持ちでも天才でも美形でもない、普通の男の子同士のお話で、とても楽しんで書くことができました。
色々と不備のあるお見苦しい本になっている予感がするので、お読みいただいた方には大変申し訳なく思いますが、姫野的には、今回の本は、もう、作れただけで満足です。

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以下に、少しだけ内容を掲載しています。よろしければ、ご覧になってみてください。こんな感じのお話です。
  





 うらやましいんだか、ねたましいんだか、よくわからないちょっと複雑な気持ちで、三歩くらい離れた場所から二匹の猫を見ていると、尚翔くんがやってきた。
「はい。これ」
 なんて渡されたのは……。
 猫耳カチューシャ!?
「なんで???」
「いや、だって、鳴さん、この前、猫の気持ちがわからないから好きになれない、みたいなことて言ってたじゃない?」
「……うん」
「だったらさ、猫になってみればいいんだよ。そしたら、少しは猫の気持ちがわかるようになるかも」
 だから、猫耳? こんなんで、猫の気もちがわかるようになるわけ?  僕は大いに疑問に思ったけど、尚翔くんは存外真剣らしい。
「鳴さんひとりじゃやりにくいだろうから、俺も参加します」
 そう言って、尚翔くんが取り出したのは、今、僕が手にしているのとおそろいの猫耳カチューシャ。
 え? まさか、尚翔くんも猫耳つける気なの?
 問い質すより先に、尚翔くんが自分の頭に猫耳カチューシャをセットする。
「どう。似合う?」
「……び、びみょー……」
「ほら。鳴さんも、つけて、つけて」
 恥ずかしかったけど、もう、ほんとにほんとに心の底から逃げたい気持ちだったけど、それを抑えて、僕は猫耳カチューシャを装着した。
 だって、尚翔くんが、僕のために、ここまで捨て身になってくれたからには、僕もその気持ちに答えないとバチが当たるよね。
「ど、どう?」
 やっぱり、びみょー?
 でも、尚翔くんの口から出たのは。
「鳴さん、超似合う」
「ぐ」
「すっげー、かわいいよ」
 にこにこ。
 いや、だから、男に向かって「かわいい」は褒め言葉じゃないから。
 心の中ではそう思ってるのに、なぜだか、頬が熱くなる。