月組新人公演 「長い春の果てに」 2002.9.10.
18:00 宝塚大劇場
今回の新人公演は、久々に新人公演らしいといいますか。。小さな失敗がチラホラと(笑)
これも大劇場ならではですかねぇ(^_^;)
全体的に新たな人材が目立ち始め、月組新公も世代交代を感じました。
82期にはスターも実力派も多いことから、新人公演でも早くから活躍していましたし、
そのためか月組の新人公演はいつも安定したレベルを保っていたなと思います。
そんな彼女たちの最後の新人公演ということで、見ている私もなんだか感慨深かったのですが、
下級生のみなさんのお芝居に対する試みがいかにも月組らしい、冒険心のあるものだったなと嬉しく思いました。
「やりすぎたかな?」くらいがちょうどいいというか、新人公演なら許される部分がありますし
経験してみて得るものがあると思うので、新人公演ではどんどん色んなことにチャレンジしてみて欲しいですね。
■月船さらら(ステファン/本役:紫吹淳)
今回が最後の新人公演。
今まで見てきたさららんの舞台の中で、今日の公演が一番好きでした。
7年の間に彼女が経験してきたこと、その一つ一つの積み重ねが誠実に舞台に現れていたのではないかと思います。
医者でありながらも心の傷と闘い、もがき苦しみながら自分を取り戻していく。
さららんの成長がそのままステファンと重なって、好演していたと思います。
感情が高まってくるとセリフや歌の時に声がこもりがちなのが少々気になるところですが
ハートのこもったお芝居がさららんのいいところだと思うし、
そういうところが歌にも現れていると思うので大事にしてほしいです。
特に、エヴァに少しずつ心を許していく過程、エヴァとの出会いからようやく自分自身と向き合おうとしていく
ステファンの心の変化が自然で、本当は素直に生きていきたいステファンの気持ちがとても伝わってきました。
変に技術にとらわれず、気持ちを大事に役作りをする人だなと毎回感じていましたが
今回特に、そういうところを強く感じました。
また、今回の公演では自分の男役像というものを模索している最中なのかなと思いました。
男役としてはノーブルな顔立ちや声など恵まれている部分ですし、何度かの新公主演も経て
これからは月組の中核を担っていく存在だと思いますので、歩みを止めることなく
今まで通りに着実に進んでいってもらいたいですね。応援してます。
■紫城るい(エヴァ/本役:映美くらら)
バウに続き初ヒロインとなって、まさに今最も注目されている娘役の一人であることは間違いないでしょう。
男役から転向したばかりとはいえ、もともと娘役の可憐さに定評のあった方なので外見の美しさは問題なしでした。
歌も涼やかでよく響く声質なのも特徴です。が、私が座った席のせいかもしれないのですが
思ったより歌の伸びが感じられませんでした。
ラストの歌はかなりよく声が響いていたので、音響のせいかもしれません。
お芝居としては14才の少女という設定上、作った感じがしてしまうのは仕方がないことかと
思いますが、彼女の本質とは少し違うのではないかなぁ・・・と。
一生懸命大人ぶってみても、やっぱり子ども。でも子どものエヴァにしか見えない真実みたいな。
ステファンを自分だけの王子様と見ているエヴァの純粋な恋心。
その小さな恋の持つ大きなパワーは、この物語の中心だと感じます。
るいちゃんのエヴァは、勝ち気な感じは伝わりましたが、病気に冒され、想像を絶する恐怖心と
一人戦っているゆえの孤独感とか、それに反発した明るさとか、そういうのがもうちょっと欲しかったです。
ラストのステファンとの再会を果たしてからのエヴァは、まさに娘盛りというべき輝きを持っていて
ダンスシーンなどとても綺麗でした。
今回の役は、宝塚のヒロインとして演じるのはすごく難しい(人を選ぶと言う意味で)とつくづく思いました。
■北翔海莉(クロード/本役:湖月わたる)
実力派と言われるだけに、登場のダンスシーンからすごく目を引きました。
(そういえば、彼女の初抜擢は「螺旋のオルフェ」のイブの影だったなぁと。。。思い出してしまいました)
案外渋い役の方が似合ってしまうのが、面白いですね。ラストの髭面に茶系のガウンなんて似合いすぎ(笑)
クロードって難しいだろうなぁと思います。
不正して、難病に冒されて、最後は死んでしまう。
波瀾万丈に色々と起こっているのに出番がとぎれとぎれなので、他の人に比べて書き込みが足りないし
ステファンとの関係も、なんとなく「ライバル」なんだな〜くらいなんですよね。セリフで説明されてるだけだから。。。
そういう面で、ラストでいきなりクローズアップされて唐突な感じがしてしまいます。
もっとこう・・・ステファンと火花バチバチって感じの場面があれば良かったのに、
最初の手術のダンスシーンくらいではイマイチよくわからない(のは私が悪いのかも・・・)
手術のタンスシーンもね〜。。。解剖じゃないのに、ステファンも手術に加わってるって何の手術なんだ??
北翔くんはもうちょっとあか抜けるといいといいますか、シャープさが出てくるといよいよステキになるのではないかと。
上級生になっていけば自然と身に付くこともあるので、見守っていきたいと思います。
■城咲あい(ナタリー/本役:汐風幸)
大収穫。娘役でヒロイン以外に大きな役ってなかなか少ないですが、この役は娘役にとっても
非常に演じ甲斐のある大きな役だと思います。
城咲あいちゃんのお芝居をここまでじっくり見たのは初めてで、正直、惚れました。
上手い!!今回最も嬉しい出会いでした。
本役の幸さんは、さすがの演技で大人の魅力と男役ならではの包容力を感じさせるナタリーとなっています。
一方、あいちゃんのナタリーは、仕事にも恋にも、真面目に正直に向かい合って、まだまだ女性としては
発展途上という部分を娘役ならではの繊細な役作りで見せていました。
大人っぽくしようとしていなくて、自然に等身大に演じているように見えたのも良かったです。
今の彼女にしか出来ないナタリーだったのではないかなと。
コーヒーを注ぎながらの会話、ステファンの事をふっきれない自分に、自分で区切りをつけて
「また明日」と去っていく姿、本当に下級生とは思えないくらいに全体を通して安定した実力で、
自分の役割をきっちり果たしていました。
今後、ますます活躍していく娘役の一人だと思いますが、ヒロインに限らずに色々と経験してほしいなと思います。
■青樹泉(ブリス/本役:大和悠河)
彼女の演技も初めてちゃんと見ました。
背が高くてエキゾティックな感じのお顔立ちが印象的です。
お芝居も悪くないです。この作品の中ではコミカルな明るい場面に出ていることが多いせいか、
若さがすごく出ていました。
また、セリフが聞き取りやすくて一生懸命に役に取り組んでいる部分が感じられましたし
フローレンスが親友の恋人とわかっていながらも、何とな〜くアピールしてみたりするお茶目な感じが
嫌みがなくて良かったですね。
■椎名葵(フローレンス/本役:大空祐飛)
本役が男役さんということもあって、割と強いカラーを持った役だと思います。
椎名ちゃんの持ち味が一番生かされる役かなぁと楽しみにしていました。
娘役さんだからこその爽やかなお色気。カツラのセンスも良かったです。
彼女のフローレンスは、恋する女性の可愛らしさが自然に出ていました。
全体的なイメージで何となく千紘れいかさんを思い出させるといいますか、
祐飛さんは男役さんが演じるからこそのバイタリティだったり、強引さだったり。
ステファンにアタックする押しの強さも、決して媚びているように見えないところが
祐飛さんフローレンスの憎めない所なんだなぁと思います。
ブリスを誘惑するときも、何だか可愛いなぁと感じさせる女性なのです。
椎名ちゃんのフローレンスは“恋する女性”の部分の比重が大きかったように思います。
「一人で生きていけないから、支え合っていけるパートナーが欲しい」
というあたりが納得の持って行き方でした。
アメリカ女性ならではの明るさや切り替えの早さ、サッパリ感。この役の大きな特徴に思います。
フローレンスは仕事を持つ女性の強い部分プラス女の人の可愛さを持ち合わせていて、
その意外性にステファンは惹かれていたんだなぁと思うのですが、椎名ちゃんは可愛い部分が
先に出てしまって、フローレンスの恋に対するパワフルさがちょっと足りなかったかなと。
ステファンに対するアピールとか、もうちょっと押しが強くても良かったんじゃないかなと思いました。
何だかちょっと控えめな印象になってしまって・・・・・
うさぎのダンスシーンでは、押しの強さがかいま見られただけに残念です。
■彩那音(アルノー/本役:霧矢大夢)
本格的に男っぽい役はこれが初めてではないかと・・・
随分声が安定してきたなと思いましたが、まだ線が細いのがどうしても気になります。
アルノーの誠実さとかちょっと気の弱いところとか、そういうところがストレートに出ていました。
また、髪型とお化粧がちょっと荒っぽい雰囲気で意外に似合っていたので、これからが楽しみです。
教授と呼ばれるほどには年を重ねたように見えないのが、やっぱり新公だからですよね。
爽やかな青年ならハマルだろうなと思いますが・・・
男役としていい経験になったのではないかと思いました。今後に繋げていってほしいです。
■楠恵華(ジャン/本役:汐美真帆)
若い頃のナルちゃんを思い出しました。
もともと男気のあるお芝居が似合う人なので、今回もさすがの仕上がり。
出番があまり多くなくて、セリフも要所要所しかないのですが、ジャンの人となりがちゃんと伝わってきました。
きちんとお芝居できる人だなと思います。
全体的に若くて爽やかな男役が増えている中、彼女のような影の部分も出せる人は貴重ですし
まして新人公演では若手ばかりなので、芝居を締めることができる人はかなり大切です。
二枚目も老け役も少年も。彼女の幅広い実力は、今後の月組にも重要な存在だと思います。
■研ルイス(ジョルジュ/本役:星原美沙緒)
いつもながら、新公では重鎮的存在として欠かせない人です。
今回も落ち着いた存在感で、場を引き締めていました。
この人のお芝居は、人の良さをとても感じるので見ていると温かい気持ちになります。
悪役とかも見てみたいですね。
■美鳳あや(歌手S/本役:紫城るい)
歌手とは言っても、3人組コーラスでほとんどダンスの場面なので、あまり歌が聴けなかったのが残念。
声はアルトかメゾソプラノくらいかな?クラシックよりジャズが似合いそうな声質でした。
スタイルいいですよね〜。背中に余計な肉がない・・・ああうらやましい。。。
幕開きのショーガールもめちゃめちゃキレのいいダンスが目を引きました。
ダンスシーンでの彼女の存在感は抜群ですよね。このことは、すでに本公演でも実証済みなので
そろそろしっかりとお芝居を見てみたいです。何故か本公演でも新公でも子役とか多いし・・・
『愛のソナタ』『血と砂』『サラン・愛』くらいしか私の記憶にないのですよ。。美鳳ちゃんのお芝居。
可愛い役より大人っぽい方が似合うんじゃないかなと思います。 次に期待。
■天野ほたる(シモーヌ/本役:紫城るい)
最初の方に登場するだけですが、すごく綺麗な方でした。
綺麗な娘役という噂は聞いて知っていましたが、お顔も勿論ですが声が綺麗でした。
お芝居はどんな感じなんでしょうか。一瞬の登場なのでそこまでわからなかったのが残念。
■花城アリア(マドレーヌ/本役:美々杏里)
やっぱり檀ちゃんの雰囲気あります。硬質な感じがそう感じさせるのかなぁ〜。。
お芝居も結構いける人だと「花の業平」新公で思ったので、もうちょっと中心よりの役が見てみたいですね。
しっかりものの婦長さん、しかも美人!なんか安心感がありました。
今回の彼女は、手術前のコーラス場面で大活躍でした。
みんなのコーラスにも消えることなく、すごい声量ですよね。
さすがエトワールを射止めただけのことはあります。
■瀬央みつき(社員/本役:嘉月絵理)
常々、面白いモノ持ってる人だなと思っていたのですが、少しの出番ながら印象に残っていました。
もう少ししっかりお芝居を見てみたいと思わせる人です。
今後の新人公演には、彼女の存在は重要になっていくのではないかなぁという予感があります。
■星条海斗(研修医/本役:楠恵華)
なかなか個性的な役作りで場をさらっていた彼女。
新人公演ならではの試みだったと思います。お芝居を楽しんでやっているのが伝わりました。