月組全国ツアー『サラン・愛』 2002.7.6. 14:00 市川文化会館

物語は、宝塚らしいといえばらしい内容で、ヒーローとヒロインが
どこまでも理想的に描かれてるメロドラマといった印象。
冒頭から突っ込みっぱなしで、若手中心のバウ作品としてはありかなと思いますが、
今回のように上級生中心となってしまうと、やはり物足りなさを
感じることが多かったです。
あらすじは、公式サイトや各書籍を参照していただくとして
私から見た各キャストの印象を順不同で書かせていただきます。


■紫吹淳
(趙 竜雲:チョウ ロンウン)
主役にしかなりえない登場人物で、脚本の書き込みが足りない部分を、
リカさんの個性と経験で埋めたという感じ。
しどころのない役といえばそうとも言える。
自分からアクションを起こして事が進むのではなく
周りが物語りを動かしていくので、結構難しいだろうなと。。。
他の主要人物との間に少し学年が開いているので、ただ立っているだけでも、
存在感や大きさといったものが自然に出ていたし、マミリカで売っていた頃とは
かなり違う印象がありました。
本来、リカさんはこういうタイプの男役さんなんだろうなと。
声がこもりがちの人なので、地方の舞台だと音響設備によってかなり
左右されると思うのですが市川文化はまあまあ大丈夫でした。
後半部分の方がリカさんの魅力が発揮されていたと思う。
ただ月組全体として新しい人材を発見できたけれど、
リカさんの新しい一面を見せられたかというと、そこは謎。


■映美くらら
(金 淑英:キム スギョン)
一途で純粋で芯のしっかりした女の子を体当たりで演じていたと思う。
とにかく、最初から最後まで役の気持ちが途絶えなかったというところに、
くららちゃんの力量を感じました。
可憐な娘役さんらしいヒロインぶりで文句なしなんですけど
そこで終わらない役作りが出来る人だと思います。
今回特に歌の上達ぶりに感激しました。
着実に力をつけていますね。成長期まっさかりとはいえ
トップ娘役への抜擢に甘んじることなく、一生懸命に取り組んでいる姿は
すごく好感が持てます。


■大和悠河
(柳 君正:ユ クンジョン)
今回良かったな〜と思った一人。
イメージは『大海賊』のキッドみたいな感じで、素朴で根は純情なんですよ。
悪ぶってるんだけど、こと恋愛に関しては純なのね。
出てくる行動がかわいいことこの上なし(笑)
その辺がタニちゃんらしい味付けでした。
でもとっても男らしくて一本気なところを感じさせてくれて、
タニちゃんの成長振りが見られました。
ロンウンのことを「いい男だ」って言うけど、君もかなりいい男だよ。


■汐美真帆
(劉 阿敏:リュウ アビン)
今回の公演で敵将をやるなら、この人しかいないでしょうね。
もう憎たらしいったらありゃしない。
何でしょうねぇ。この人のうまさって、腹が立つほど嫌味に演じてても
惹かれちゃうところがあるんですよ。
これはケロさんの魅力ですよね。
『我が愛〜』のチャムガの衣装、いっぱい着てました。


■大空祐飛
(李 世煥:イ セファン)
今回の公演のために書かれた、新しい役。
ロンウンの右腕的存在で、思うに『チェーザレ〜』で言うところのドン・ミケロット。
まさに腹心ともいうべき働きぶりで、一貫してロンウンのために
という気持ちが見える。
これまたいい男なんですよ。
祐飛さんはこういう役をやらせると本当に上手いよね。
そしてファンもこういう役に弱いんだ・・・・(^_^;)
メイクもスッキリしていてカッコよいし、
衣装も、私は鎧などつけた衣装よりシンプルな方が似合っているなぁと思いました。
祐飛さんから歌いだす場面があるのですが、声が落ち着いてきて
浮かなくなってきました。
安定して、伸びるようになれば尚良しです。あともう一息。


■花瀬みずか
(柳 蘭影:ユ ナンヨン)
今回の敢闘賞はこの人。
初めの方はほとんど出番なく、中番から大活躍で彼女の第一声は歌なんですね。
この歌がとにかく綺麗で、伸びやかさと透明感があふれてました。
そして、もう一点。
この歌は宴の場面なのですが、彼女は捕虜としてアビンにつかまり
生きていくために愛人となるのですが、
不本意ながらも、こうやって生きるしかない自分の悲しい性を嘆いているような
悲哀を感じさせる歌になっていたのがとても印象的でした。
芝居的にも、前に出すぎることなく、かといって沈むことなく
しっかりと自分の役割を果たしていたと思います。
さすがにヒロイン経験豊富な娘役さんらしい、たたずまいと身のこなしでした。
この辺が彼女の魅力ですね。


■椎名葵
(洪 栄琴:ホン ヨングム)
役としては二場面だけの登場だったのですが、新進娘役としての
初々しさは出ていたと思います。
可愛らしさを出すと、なぜかべたついた声になってしまうのが残念。
歌うと綺麗な声なのになぁと。。。滑舌の訓練を。
それにしても、椎名ちゃんはいい雰囲気を持ってますよね。
幕開きや途中の雪の精など、しなやかで艶のある風情がこの作品によく合っていました。


■美鳳あや
(金 紅蓮:キム ホンギョン)
くららちゃんの妹役ということで、かなり幼い役作りをされていたようです。
宝塚ってこの辺りが難しいなと思うのですが、くららちゃんの役は女学生で、たぶん10代。
さらにその妹ということで、お友達風にならないためにも
二人の間の年齢差を出したほうがいいとは思うのですが、
同じ10代だとしてもかなり低い年齢なんですよね・・・
子どもと大人の間っていう年齢は本当に難しいんだな〜と・・
美鳳ちゃんは、ちゃんと可愛らしく無邪気に演じていて、妹としての表現は
きっちり出来ていたと思います。
しぐさもすごく可愛らしくて、やっぱり踊りが徹底的に身についている人という
印象を受けます。その分、どこかダンス的というか作った感じがしてしまうときが
あるので(作らないと出来ない年齢なんだから仕方がないんだけども)
この辺が解消されてくるといいなと思ったりしました。
とはいえ、雪の場面で彼女の最大の魅力である表現力抜群のダンスが光っていたので、
大変満足でございました。


■花城アリア
(貞林:チョンリム)
名前の通り、なんとも素晴らしい歌声で。。
月組の方の歌声を聞き分けることにはかなり自信を持っていた私にも、
この方にはまだ慣れておりませんで・・・
しかししかし。。星組さん出身ということでね〜
思い出しました!『花の業平』新人公演!!
いやぁ〜ありがとうございます。いい人材をいただきました。。
影ソロなんてもったいないよ〜。
檀ちゃんの若い頃を思い出させる楚々とした感じの表情が時折見られました。
楽しみ楽しみ。(感想になってないのではないか??)


■研ルイス
(永珠:ヨンス)
いつもいつも、凝った役作りを見せてくれる方ですが
今回も、盗賊でありながら心の優しい面をもった人という
役柄をきっちり演じていました。
せっかくなので、歌って欲しかったなぁ・・・
何気に、この公演は歌が少ないのね。。