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何故か今更『十二夜』特集

『十二夜』

なぜに今さら『十二夜』?というツッコミを自分に入れつつ・・・ 
「気にするな。だって好きなんだも〜ん♪」
この気持ちだけを頼りに、思いつき特集やってしまいます。

わたくし、シェイクスピア作品の中でも、この『十二夜』が一番好きです。
その昔、『女たちの十二夜』という舞台をテレビで見まして、
「本当のシェイクスピアに触れた!」と思った次第です。
そのときのキャストも素晴らしく、主要な役どころを女性が演じるという面白い面々でした。 
言葉の妙。真面目であればあるほど滑稽で、シェイクスピアの面白さを実感した作品。
よく「シェイクスピアは台詞が大変」と聞きますが、本当に、量も多いですけれど、
一つ一つの台詞が芝居の細かい骨組みになっていてどれか一つが欠けても成り立たない
とても重要な意味を持っています。
そして、笑いや涙の中に、人間臭さや滑稽さやもちろん美しさも。色々な要素が含まれていて
いつの時代にも変わらない、どんな風に形を変えても失われることがないテーマ。
“人間”を描いているからこそ、人に訴えかけるパワーを持っているんですよね。
私ごときがシェイクスピアを語るとは。。勉強不足丸出しなんですけれども、
この『女たちの十二夜』という作品を通して、初めてシェイクスピアへの興味が
出てきたわけなのです。


シェイクスピアはすれ違いと勘違いのドラマ。(そーなの??ええ。アタクシ的にはね)
どの作品も、ちょっとしたすれ違いと勘違いから笑いが起こり、悲劇が起こっていきます。
この『十二夜』という作品もまた、数々のすれ違いから事件が起こって最後は大団円を迎えるわけです。
そしてこの作品の一番楽しいところは悪人が一人も出てこないんです。
まあ、ちょっとした悪戯者や嫌味な執事など出てきますが、彼らは決して悪人じゃなく
愛すべきキャラクターとして描かれているんですね。
世の中って、大半はこういう人たちばかりだと思うんですよ。
そんなしごく普通の人たちがてんやわんやの大騒ぎに巻き込まれつつ、最後には「めでたし・めでたし」と結ばれる
ある種の
能天気さが、この『十二夜』の面白さじゃないかなって思います。
わたしはこの作品をきっかけにいくつかのシェイクスピア作品を見ました。
宝塚でも何度かシェイクスピアが上演されましたし、映画や舞台も見ました。
その中で感じたことは、役者の個性、演出家の世界観、そういったものを感じさせる作品が私は好きだなということです。
それってシェイクスピアに限らずなんですけれど、大きな筋が決まっているシェイクスピア物だと、
よりいっそう、創る人たちの個性がはっきりわかるんです。
それは、すでに完成されたクラシック音楽が指揮者、演奏者によって見せる姿が変わるのと似ているなと思います。
世界中の演劇界でたくさんのシェイクスピア作品が上演され、もちろん映画にもなりました。
人それぞれ、好みの作品があると思うのですが、私はシェイクスピアの面白さは喜劇にあると思っています。
笑いって、一番パワーがいるものじゃないかなと。人を笑わせることも笑うことも、とっても
エネルギーがいりますよね。
「笑う門には福来る」まさにその通り。笑いの絶えない場所には幸せがあります。
人は悲しいとき、苦しいときにこそ笑うことが必要なんじゃないかって、常々思っている次第です。
もしあなたがシェイクスピアを見たことがないのなら、是非是非この『十二夜』をオススメします!


 
【女たちの十二夜】

どれも個性的な舞台でしたが、私が一番好きなのはやはり『女たちの十二夜』です。
セットや衣装はシンプルなものでしたが、役者それぞれの個性のぶつかり合いで
本当に目の離せない舞台でした。

このときにシザーリオを演じられたのは、元星組の
青山雪菜さん。
台詞の時の声などがいかにも少年ぽく、またオリヴィアに迫られたときの困惑した演技など
宝塚時代には見ることができなかった一面を見せてもらいました。
マルヴォーリオには
白石加代子さん。この作品の主演ですが、マルヴォーリオってものすごく
難しい役ですよね。この役と道化のフェステは、かなりポイントの作品だと思います。
白石加代子さんはさすがの存在感と、やはり観客を引き込む力のすごさを感じました。
舞台女優を見た!!!と目からウロコでした。
片桐はいりさんもやはり素敵な女優さんだなと思ったのですが、独特のオーラを放っていましたね。
サー・アンドルーという、この作品の中では本物の阿呆ということになりますか。
面白かった〜。初めてちゃんと演技を見ましたが、一気に好きになりましたね。
それからフェステの
生瀬勝久さん。セバスチャンの内野さんと共に、この作品唯二(笑)の男性キャストです。
飄々とした持ち味で、阿呆を演じている利口者というよりは、悪戯小僧みたいな。
舞台の突っ込み役といいますか、所々に現われて、チョコチョコっといじって、それを傍観してるって感じでした。
まだテレビ出演してメジャーになる前の出演だと思うんですけど、
目がギロッとしてちょっと悪魔っぽいというか。。
メイクが怖かった(笑)
最後歌うんですけどね、その歌の内容が何か。。好きでしたねぇ。

見すぎてビデオがぼろぼろになってしまったので、是非もう一度再放送してください・・・
(本当にお願いします真剣に。)


 
【十二夜】

平幹二郎主演の『十二夜』は、シェイクスピアにじっくり取り組んだっていう感じの
たぶん一番オーソドックスな舞台だったように思います。
喜劇としての楽しさ、ハッピー感みたいなものは薄くて、いかにも“演劇”って感じの
重厚さみたいなものを感じました。

このときのシザーリオは
麻乃佳世さん。ショートカットがボーイッシュでした。
心の美しい娘ヴァイオラは、そのままよしこさんの持ち味にピッタリで、軍服姿もなかなか凛々しく
男装しているために伝えられない公爵への切ない恋心と、公爵を喜ばせたくて一生懸命に
使いを果たそうとする健気さが、何ともよしこさんらしいなぁ〜と。
で、やはり彼女の持ち味である“甘さ”が、この作品に爽やかさを添えてくれ、
ひとときの安らぎみたいなものを与えてくれました。
マルヴォーリオには、主演の
平幹二郎さん。
常々この人には役者としての狂気めいたものを感じていましたが、やはり生はすごかった。
あの目が・・・

一列目での観劇でしたので、
目が合っただけでになりそうでした。私。(笑)
マルヴォーリオが牢に入れられる場面では、車椅子に縛られているという演出だったのですが
あまりの迫力に、縛られている手足も引きちぎってこっちに向かってきそうな勢いでした。
次に平さんの舞台を見るときは、少し離れた席から見ようとそのとき思ったのを覚えてます。
(だって心臓が止まりそうだったんだって)
何だろう。。平さんのマルヴォーリオはある種の狂気と人間臭さを前面に押し出した
マルヴォーリオだったように思います。
ここが平さんらしさというところでしょうか。
人間のあまり美しいとはいえない部分をあえて強調した創り方になっていて、それゆえの面白さ、滑稽さ、おろかさ。
この人の持ち味が舞台全体に感じられ、それがこの作品の味になっていました。
ある意味、わたしがシェイクスピアに抱いているイメージを、一番具体化している舞台であると感じます。


 
【十二夜〜またはお望みのもの〜】

大和悠河主演『十二夜〜またはお望みのもの』は、甘やかで華やかで爽やかで。
宝塚ならではのエスプリが随所に感じられました。
演出の木村先生は、宝塚の“夢”の部分を、まるで絵本のように、お砂糖菓子のように、
女の子が一度は憧れる形としてわかりやすく見せてくれる先生だなと思うのですが、
この『十二夜』は、大人のメルヘンといった趣で、ホントに悪人が一人も出てこない。
全員が愛すべきキャラクターとして描かれていて、舞台全体が明るいなと思いました。
見終わって、素直に面白かった。楽しかった。そういう感想が出てきます。
他の舞台と違うのは、オーシーノーが主役であるということ。

主演の
大和悠河さんはお衣装が豪華。場面ごとにお色直し。まさに王子様でしたわ。
男の子に扮したヴァイオラ(花瀬)がオーシーノー公爵に一目惚れ。納得。
ありえるわ。このオーシーノーなら。。と思いました。そのくらいキラキラ感全開のオーシーノー。
(キラキラ☆キラキラ☆)(登場するたび王子〜っっと心の叫び・笑)
演技的な面では、なんでしょうねぇ。もともと主役ではないこの役が中心ってのが問題なんですけど
周りが物語りを動かしていくので、オーシーノー自体は言ってしまえば
≪ええとこ取り≫なんですよ。
いいときに出てきて、おいしいところをさらっていく。ちょっと水戸黄門的な(オイ)
まあ、はっきり言ってタニちゃんだから全然OKになっちゃう役です。
それでも、誠実さとか紳士的な立ち居振舞いであったりとか、そういうオーシーノーの人柄の良さはすごく出ていたと思うし、
だからシザーリオが一生懸命に尽くそうとする気持ちも自然で、いいなぁって思いました。
でもって、タニちゃんとこの作品のカラーがピッタリで、とにかく幸せな気持ちにさせてくれるんですねぇ。
やっぱり主役のカラーって大事ですよ。
事実上の主役と思えるシザーリオ(ヴァイオラ)には
花瀬みずかさん。
バウ初ヒロインなのに、ほとんどが男の子の格好というのも何だかちょっとかわいそうかなと思ったりしたものの
花瀬さんのシザーリオは、ちゃんと宝塚の娘役として成り立つ役柄だったと思います。
すごい一生懸命なんですよ。彼女のシザーリオは。
公爵のことが大好きで、自分の恋心よりも公爵の喜ぶことを一番に考える、本当に健気なシザーリオで
公爵が可愛がるのも無理ないよね。って思いました。そのくらい、
ピュアなんですね。不純物がないの。
(撫で撫でしたくなるのよ)
無償の愛っていうんですか?そういう感じがよく出ていたなと思います。
それと、他の舞台のシザーリオと決定的に違うのは、常にオーシーノーへの恋心がベースになっていて、
それゆえに、本来なら主役ではないオーシーノーが主役になり得たという感じです。
そこのところを花瀬さんは的確に、また愛らしく演じていましたし、また、彼女の生真面目さが
シザーリオの一本気なところとマッチしていて、初ヒロインらしい初々しさを見せていました。
サー・トービーには、
大空祐飛さん。
本当はこの役はオリヴィアの叔父なのですが、祐飛さんが演じるということで、オリヴィアの従姉弟ということになっています。
いい具合におちゃらけていて、いたずらが過ぎる困ったさんでしたが、
祐飛さんの新境地を開いた役立ったのではないかと思います。
わがまま放題、大酒飲み、従姉弟はお金持ちでもトービーは貧乏なんですよね。
はっきり言ってしまえば、いいとこナシの体たらく。
全然二枚目じゃない(ああ・・・言っちゃった)
そんなトービーも、何だか憎めない可愛いヤツに描かれていましたし、
祐飛さんにも似合っていて(あ・・・似合っちゃったのね)
この役がこういうふうになっていないと、ただの弱い者いじめ(マルヴォーリオが弱いというのではなくて、老人ってことよ・・。
アンドルーだって
阿呆と言われ続けてるし)の嫌なヤツになってしまうと思うのですが、
そういうところ上手く処理されていたなと思います。(演出的にも祐飛さんの演技的にもね。)
マルヴォーリオには
立ともみさん。フェステには真山葉瑠さん。
お二人とも、技巧者としてこの舞台に
ピリリとスパイスの役割を果たしています。
この人たちなら!という安心感ですかね。
ちゃんとお芝居としてお客を笑わせることが出来る方々だと思います。
特にルンパさんのフェステは、悲しいくらいにフェステなんですよ。
道化師って、人を笑わせてなんぼの商売。優しくないと出来ない仕事ですよね。
ルンパさんのフェステは、人をコケにしているように見えて、実は優しく包んであげてる感じがしました。
「ぱっと現われて、お天道様のように光ってみせるのさぁ」
ルンパさん独特の、ちょっとしんみりしちゃう何かを感じさせてくれるフェステだったなと思います。
そして月組『十二夜』の世界を一番にあらわしいてるのが、ルンパさんのフェステだったかなぁ。。


 
【エピファニー〜顕現日〜】

あの・・・・この作品の感想をと思ったのですが。。半分以上
覚えていない自分に、驚きとショックを隠せません。
見たのに覚えていないって、
どぉ〜ゆ〜こと〜っっ(怒)
告白します。この公演で覚えている人は、朝澄さん、えりかさん、岡田君(嶺恵斗)の3名のみ。。。
まずはプログラムをぱらぱら。ああ、彩ちゃんは“おたか”だったわねぇ。(コラッ)
妃里梨江ちゃんは“鞠”。そーだそーだ。いかにもお嬢様な名前だなと思ったんだった。
しばらくこのプログラムを眺めていて、ちょっとずつ思い出してきました。
面白いとまではいかなかったものの、なかなか収穫のある公演だったのですよ。確か。
断片的な記憶を書いてしまっても良いものだろうかと思いつつも、その収穫を記しておこうと思います。
(それぞれのファンの方申し訳ありません。悪気はないんです。ただ覚えてないんです。
悲しいかな。アタシ自身それがショックだったりするんです・泪)

この公演では舞台が日本になっているのですが、セバスチャンとヴァイオラにあたる高太郎とおたかを
彩輝直が演じました。
ほとんどおたかとしての登場でしたので、彩ちゃんがヒロインということなのかな??
まあ、たぶんそうなんだと思うんですけど。
だけどですね、彩ちゃんは男役さんなのですし、できれば男役姿が良かったですな。私としましては。
彩ちゃんは、ナイーブなお芝居をする人だなと、この役を見て改めて思いましたね。
歌は・・・正直上手いとは言い難いものの、私は嫌いじゃないんですよね。
鞠の
妃里梨江ちゃんは、やはり美しい娘さんぶりで、お嬢様バリバリでした。
恋に恋する乙女ってな感じで、原作でいうとオリヴィアなのですが、兄に扮したおたかに一目惚れしちゃうんですよね。
そこがまた世間知らずのお嬢様っていう感じで、なかなか良かったと思います。
しかし、この作品で最もヒットを飛ばしていたのは福永(サー・トービー)
朝澄けいさん、八重(マライヤ)美椰エリカさん
岡田君(サー・アンドルー)
嶺恵斗さんの3人組。
かよこさん、こんなにコメディーがいける人だったとは!!田舎出のエリート、超勘違い野郎なんですけど、
憎めないく可愛いヤツなんですよ。
で、お嬢様の召使い八重さんがこれまたえりかさんらしいといいますか、ちゃきちゃきとテキパキと指示を出してですね
何か、普段のお二人を見ているようでした(笑) 漫才コンビみたいなね。
福永:
岡田君!(パチン)
こんなお茶目なかよこさんに出逢えて、ワタクシは嬉しゅうございました。
で、相棒というか、福永の秘書になるのですが、岡田君を演じたのが演技者として注目していた嶺恵斗さんなのです。
彼もまた、面白い味を持っている人でして、この3人がこの作品のテンポを上げていました。
まとぶんのクサクサのチンピラぶりも忘れがたいですね。おそらくこの役はアントーニオに当たると思うのですが
男気を感じさせる骨太さがありました。
『十二夜』に森鴎外の『舞姫』が少しミックスされた内容だったなと、今プログラムを見ながら思い出している所であります。
出来不出来は置いといても、楽しい作品だったなと思います。
それぞれの持ち味にも合っていたと思うし、新しい魅力も発見できたし。
バウホール公演という劇場ならではの演目だったなと思います。