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月英からの手紙

夜が深けるたび 私は灯を燈しましょう
あなたを想って
ただ一度きりの出逢いだけれど 
今もこの胸に鮮やかに思い出されるのです
決して色褪せることのない追憶

私は幻を見ていたのでしょうか
いいえ。この胡蝶の杯は確かにあなたと手にしたもの

花田での逢瀬
花の下で語らい頬よせあった
ほろ苦い胸の痛みは 夜が明けても消えることはありません
花田での逢瀬
まるで鏡に映った花の影 水に揺らめく月の光の如く
幻のようなあなたに 今も焦がれているのです
誰にこの想いを咎めることができるというのでしょう

美しいあの夜に酔い 恋しい想いに舞ってみても
静かに重なりゆく雪にさえ この心を静めることはできないのです
私たちの間に流れる 長い長い歳月
いつか必ず 再びあいまみえる時が訪れるに違いないと
どんな小さな川もやがては海に辿りつくように
今は別々に流れている私たちの時間も
いつの日かひとつになれると信じて

月に誓いましょう
私は毎夜 あなたを想い灯を燈しましょう
あなたは月に私の名を呼びかけてください
私は月の光となり 時さえも越えて
あなたの下へまいりますから

月英

(2006.04.01.)