ATTENTION:ネタバレ内容が含まれていますので、未見の方はご注意ください。
         タイトルをクリックするとアマゾンへリンクしていますので、購入もできます。

【チャイニーズ・ゴースト・ストーリー2】


原題「倩女幽魂2人間道」 1990年 香港作品
監督:チェン・シュウ・タン
 


時間:103分
音声:北京語、広東語
字幕:日本語、英語

 
レビュー

今回は前作に続き、パート2もレスリー・チャン×ジョイ・ウォンという顔合わせに加え、
ジャッキー・チュンやミシェル・リーも登場。2では前作から登場しているツァイサンと道士のみ通し役で
ジョイ・ウォンはスー・シンに生き写しの別人という設定になっています。
ストーリーも前作の続きという形をとっているので、できれば1を見てからご覧になられることをお勧めします。
(大抵の人はそうするでしょうが・・・)

ツァイサンは相変わらずのキャラクターで、今回も登場する女性の方が全然強いんだけど
やはり苦しい恋を経験した分、ちょっとは成長しています(笑)
集金もできず雇い主の元に戻ってきたものの、町は荒れ果て妖しげな男たちがウヨウヨ。役人は見る人見る人、罪人扱い。
ツァイサンも何もしていないのに捕まってしまって牢に入れられてしまいます。
同室になった老人(実はすごい学者)に助けられ牢獄から抜け出したツァイサンは、そこにあった馬で逃げ出します。
馬を盗んだツァイサンを追いかけるジーチャオ、廃れた屋敷の中で一夜を過ごすことになったわけですが、
ここでゴースト騒動に巻き込まれたり、無実の罪で囚われの身となった父を助けるため奔走する美人姉妹
チュイフォンとユウチーたちとの格闘になったり、ツァイサンと関わってしまったために散々な目に遭ってしまいます。
姉妹たちもツァイサンに協力を頼んだばっかりにスマートにことが運ばないんですが、
でもそんな面倒もちっとも嫌な気持ちにならないのは、その相手がツァイサンだから。
ツァイサンとチュイフォンはハッキリと思いを口にすることはないのですが、
次第に二人の距離が近くなっているというのは二人の視線から感じ取れますし、
最初はツァイサンに好意を持っていたユウチーがジーチャオに惹かれていく様子も
女を好きになっちゃダメだと思いつつユウチーに思いを寄せるジーチャオの心も、
セリフとしては出てこなくても感じ取れます。


今回のストーリーは「人間道」というタイトルがついている通り、ベースには人間の欲とか本質とは何なのか。
といった案外マトモなテーマが敷かれていたりして、娯楽作品なんですけど結構シュールだったりします。
出てくる人たちもとても人間らしくて、間抜けなおかしさがあるんですよね。
前回の作品はファンタジー色の強い作風でしたので少しイメージが変わっているのですが、
そこを通し役であるレスリーの理想を追う若者とウー・マの人の世の虚を知る存在を残すことで、
1と2との繋がりが違和感なく保たれているのではないかと思います。
また、一方は未来へ、一方は永遠の別れ。二組のカップルを対比が上手い!
前作で悲しい別れしかなかったツァイサンが未来へ繋がる希望を得たとき、また別のカップルは永遠の別れを経て
どこかの未来に繋がっていく・・・
これもまた輪廻転生という思想を持つ東洋らしいラストの組み方だと思います。

−−−

前作でスー・シンとの哀しい別れを経験したツァイサン(レスリー・チャン)
恋やつれどころか少しふっくらしてる??なんて言わないの。いいんです。若さゆえということで(笑)
長いアゴ鬚姿が珍しいんですけど、やっぱりツルツルお肌が魅力のレスリーですから、やっぱりねぇ。(画像にマウスオンしてくださいネ)
鬚を剃るきっかけもスー・シンそっくりのチュイフォンのためだったりするところがカワイイ。
前回の苦しい恋を忘れらず彼女の面影をチュイフォンに追ってるんだけど、
スー・シンの生まれ変わりではないと自分に言い聞かせてる。そして次第にチュイ・フォンに惹かれていくんですね。
今回のトボケっぷりも相変わらずで、守ってあげたくなる可愛さと他人のために一生懸命になれる優しさはツァイサンだなぁ。
そのせいで周りは振り回されっぱなしですが、まったくそのあたりは変わってないです。
むしろ前作よりも彼に振り回される人数が増えている(笑)
荒んだ時代背景だから武術が全然ダメなツァイサンって弱っちく見えちゃうけど、
“男は強く女を守るものだ”っていうようなヒーロー像じゃないところがすごくいいと思うんですよ。
レスリーにそういう役が似合わないことはないってことは他の作品でも分かることなんだけど、
本来の彼の魅力って言うのはやっぱりツァイサンに近いと思う。
ツァイサンのまっすぐな気性にレスリーの持つ“愛される”人間的魅力が加わってより生きたツァイサン像を描き出しています。
夢も希望も持てないような世の中で、それでも夢はきっとあるんだよって言うツァイサンだから
最後には愛する人と一緒に旅立てたんですよね。ツァイサンの魅力っていうのはこういうところにあるんだと思います。

好きなシーンは数々ありますが、
「スー・シン、生まれ変わるな。この世は辛い」
と意識を失ったままつぶやくところは切ないですね。
彼にとってスー・シンとの恋は忘れることができないものなんだなぁ。
こういう一途な部分も嫌味なく見せてしまうレスリーの若さがたまんないです。


美人姉妹の姉、チュイフォン(ジョイ・ウォン)はスー・シンにソックリで、ツァイサンの驚きも当然。
彼女は武術の達人で、ツァイサンを高名な学者だと勘違いし父の救出のため協力を求めます。
相変わらず美しい人ですが、ツァイサンとの最初の出逢いの表情がすごく綺麗で見とれてしまいます。
この人は飾りっ気のないメイクや衣装の方が素の美しさが生きていいなぁと。
チュイフォンは実に長女的な性格の強い人です。
父の大臣を助けるために、みんなの中心となって計画を進める姿や恋に関しても、
心を抑えて周囲との調和をまず第一に考える理性的な部分の強い女性だと思います。
ツァイサンはスー・シンのことを忘れられず、そっくりなチュイフォンに何度も思い出を語ります。
生まれ変わりどころかまったくの別人なわけですから彼女にとっては切ないに違いない。
そんな彼女が最後には決められた結婚を蹴ってツァイサンの元へ。
初めて心に正直な行動に出たチュイフォンがすごく可愛い。とっても好きです。


今回のツァイサンお助けマン、ジーチャオ(ジャッキー・チュン)
コミカルな演技に違和感がなく、またただ笑わせるだけの存在でもないところが良いです。
香港映画ならではの遊び心たっぷり笑いたっぷりの、でも手に汗握るアクションシーンを一手に引き受けています。
この役はなかなか演技力の必要とされる役だと思うのですが、
ジャッキーはお調子者だけどちゃんと信念を持った若き僧侶を、節度のある笑いとアクションでしっかり魅せていると思います。
また、ユウチーとの淡い恋も伏線としてあるのかなぁ・・・と思いきや、実は切ない結末が待っていたり。
本作での存在感はかなり大きなもので見せ場もたくさんありますが、やはり一番のお勧めはゴースト退治のシーンでしょうか。
ツァイサンの一生懸命さとジーチャオの必死っぷりが激笑です。


チュイフォンの妹ユウチー(ミシェル・リー)
小顔で目鼻立ちがハッキリとしていて現代的な美人のせいか、何となく雰囲気が浮いている気がするのですが・・・
他の人が強いキャラに負けない個性を持っているので、少し存在が薄い感がしないでもないですが
姉に比べて自由な発想と行動力を持ってる妹だという感じは出せていたと思います。
前半よりも後半の方に魅力を感じたのは、叶わぬ恋に耐えてる姿よりも新しい恋にまっすぐに向かってる姿の方が
似合ってるからかな。体に戻れなくなった魂のジーチャオを必死に追いかけるユウチーの瞳が印象的です。


“道”の歌はツァイサンにとられ、ツァイサンのお助けマンもジーチャオに取られ・・・
でも最後にツァイサンを助けてくれるのはやっぱりイン道士(ウー・マ)
若いもんには負けません。今回もかっこいいです。道士〜っっ
流派が違うなんて関係ないない。まだまだ経験不足のジーチャオをしっかりサポートしてくれる優しいおじさんなのですよ。
人と関わるのは好きじゃないと言いながら、心の優しい人たちにはちゃんと優しさを返してくれる素敵な人なんです。


無実の罪で囚われた大臣を刑場まで護衛するウー隊長(ウェイス・リー)
これがなかなか男気のある人物で、朝廷の決定に疑問を持ちつつもそれに従うしかない自分にちょっと嫌気がさしてるんです。
大僧正が本当は妖怪だったことを知り、正義感の強い彼は大臣たちを助けようと闘います。
ちょっと無鉄砲な気もするんですが、熱血漢の隊長という意味ではそれも良いでしょう。



大僧正の殻を被った妖怪が不気味。
この妖怪のせいで君主が操られ宦官たちは抜け殻になり、世の中が荒れ果て人は人を信じられなくなった。
って設定されているのだと思いますが、偶像崇拝を皮肉ってるとこなんか結構本質を突いてるんですよね。
この妖怪が死んでしまってもたぶん変わらない。また同じように人の弱さを利用して力を得ようとする者が現れる。
人の心の危うさとか不安定さを指摘する一方で、ツァイサンやチュイフォンのハッピーエンドによって
そんな時代でも未来があるのだという光を残して終わる。
最初にも書きましたが、娯楽作品のわりにちゃんと筋が通ってるところがさすがだと思いました。
登場人物たちの個性もさることながら、楽しいだけに終わらせない作り方が私がこの作品が好きな理由です。
1の面白さとはまた違った魅力があるので2もやっぱり好きです。

 
[主な登場人物]
マウスオンプリーズ
ツァイサン(レスリー・チャン) チュイフォン(ジョイ・ウォン)
不純物のないピュアな人間。
ズッコケっぷりもツァイサンの魅力の一つ。これがなくちゃぁ、つまんない。
今回も思いっきりとぼけてくれています。
武術の達人。
父を助けるため、妹と協力して救出作戦を実行する強さと、スー・シンを忘れられないツァイサンを気遣う繊細な一面も持っている。
ジーチャオ(ジャッキー・チュン) ユウチー(ミシェル・リー)
妖怪退治専門の若き僧侶。
ふざけていません。彼はいつも一生懸命。
ハラハラドキドキ、笑いと涙をみなさまにお送りします。
武術の達人。
姉と共に父の救出に奔走する。
機転の利く頭の良さと転換の早さが現代っ子っぽさを感じさせる。
イン道士(ウー・マ) ウー隊長(ウェイス・リー)
今回もモチロン登場!スーパー道士。
ツァイサンのことならオレが守るゼィ。
なんだかんだ言っても
本当は優しいお父さんのようなヒトなのです。
正義感溢れる熱血隊長。
片腕を切り落とされて
も敵に向かっていく闘志はまさに武人の鑑。
素晴らしい剣さばき、とくとご覧あれ。