MENUBOOK2009

■かもめ食堂 / 群ようこ
まず映画を観た。独特の間と空気が良く原作を読んでみたくなった。
登場人物の過去について、原作では結構なページを割いている。特にサチエに関して、ヘルシンキで店を出すまでの経緯は予想外だった。
映画のほのぼの雰囲気を期待すると軽く裏切られる。以外にもドライでシュールな面を持っている。
どちらが優れている、というものではなく、映画には映画の、小説には小説のよさがあり、味わいも異なる。
小説「かもめ食堂」では、登場人物たちの心情が書かれているため、よりキャラクターの性格がくっきりと浮かびあがり、また人々の交流の深まりを感じることができ、その分映画のようなファンタジーめいた空気は薄れる。反面、サチエがこだわるおにぎりについての描写がやや説明的になりすぎて、肝心のエピソードに対する思い入れが薄くなった感がある。このシーンはやはり多くを語らず、ただ大切な思い出をポツリ語るサチエの表情にすべてが集約されていた映画に勝るものはない。
ミドリとトンミのやりとりはその逆で、小説の心のひとり言が笑いを誘い、小説ならではの楽しさを感じた。

あくまで個人的な感想ですのでご参考程度にお読みいただけると幸いです。
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