<投稿>   ブラームスとその周辺の人々 (最終回)
                                     B.鈴木 愼吾
 
   エドゥアルト・ハンスリック        (1825〜1904)
1879年、ブラームスのヴァイオリン協奏曲がライプツィヒのあとウィーンで初演されたとき、初めてそれを聴いたハンスリックは「メンデルスゾーンとベートーヴェンの同種の作品が現れて以来、この種のすべての最も重要なものといってよかろう」と書き、やがて、それはその通りになった。(ご存知のようにベートーヴェン=ニ長調、メンデルスゾーン=ホ短調、そしてブラームス=ニ長調の3曲は古今のヴァイオリン協奏曲中の傑作とされ、三大ヴァイオリン協奏曲などと呼ばれることもある。) 彼は世界で最初の音楽批評家と言われ、その耳の良さと優れた洞察力は、はじめに記した半ば予言的な言葉によっても知る事が出来る。プラハ生まれの彼は、プラハとウィーンで法律と哲学を学び、学位を取った後は、‘ウィーン音楽新聞’等を経て、主に‘Neue freie Presse(新自由新聞)’で執筆活動を続けた。  1862年秋、ウィーンに定住することになったブラームスは翌63年1月の演奏会でバッハ、ベートーヴェン、シューマンなどの作品と一緒に作品5のソナタを演奏したが、ハンスリックはこの演奏会を高く評価し、3月に開かれたセレナードの演奏を聴くに及び「この作曲家は、すぐ大家と同列になる」と述べ、ブラームスを支持激励する側に立った。史上名高いブラームス派とワーグナー派との対立は、音楽史の上で決して実り多いものであったと言うことは出来ないが、圧倒的なワーグナー派に対する少数のブラームス派にとって、ハンスリックは最大の論客であったことは間違いない。当たり前だが、ブラームスは当時の現代音楽、その交響曲が初演された時の彼の論評を読んでみても、各々の曲の性格を、これほど的確に(初演時に)表現する事が出来る才能は、やはり非凡である。  前回のドヴォルザークの折、書いたように‘Neue freie Presse ’に掲載されたブラームスの葬儀の模様を伝える記事はハンスリックが書いたものと思われる。記事の冒頭を紹介してみよう。  《1897年4月6日ウィーン 今日の天気は、まるで亡くなった巨匠の精神を写しだそうとしているかのようだった。太陽が雲たちと競い合った寒い春の日がやってきた。ブラームスの音楽のなかで厳しさが優しさと混ざり合うように、今日は冬のような大気が我々を迎えたかと思うと、その大気はやがてより穏やかな春の動きに屈した。昼頃にはまた太陽が雲間から顔を出して勝ち誇ったように輝き、おかげで巨匠ブラームスは、春のハーモニーのなか、「永遠の場所」に通じる最後の道を歩むことができたのである。》
(《 》内の引用は、関根裕子氏訳に依る。)
 淡々と、そして詳細に続く記事は、かつての盟友を送る追悼の思いでもあったのだろう。

 エリーザベト・ヘルツォーゲンブルク (1847〜1892)
 ブロンドの髪を持った美しい少女エリーザベトが、ピアノを学ぶため、初めてブラームスに会ったのは1863年、ジュリエットと同じ16歳。ロメオになれなかった(あるいは、ならなかった)ヨハネスはすでに30歳だった。彼女が特別な才能を示していたにも拘わらず、その指導を彼は何故か、ピアノ教師エプシュタインに任せてしまう。後の推測によれば、ブラームスはこの少女の魅力の虜になることを恐れたものらしい。
 1868年、彼女はバッハ協会の設立者であり、作曲も学んでいたハインリッヒ・ヘルツォーゲンベルク男爵と結婚。ライプツィッヒに住むことになったが、ブラームスの良き理解者であった夫と共に同地で開かれた「ブラームス週間」に彼を招待した。10年ぶりに再会したエリーザベトは以前に増して美しく、ブラームスは苦い嫉妬を味わいつつも、良き友人としての距離を保ち、以後、生涯に亘ってその優れた音楽的才能に助言を求めた。
 ブラームスは新しい作品を夫妻のもとに送り、彼女の類い希な才能は、その適切な論評を作曲者のもとに送った。それは永いこと、クララとの間に続けられていた習慣であったが、今や、その役割はエリーザベトが務めるようになり、そのことがブラームスとクララとの争いの種になることもあった。同じ事はエリーザベトにも起こり、ブラームスが後に親しくなったアルト歌手、ヘルミーネ・シュピースのために書いた歌曲がヘルミーネを通してエリーザベトに送られたりもした。このような行為は一見、残酷とも、無神経とも言えるかも知れないが、うらを返せば彼女たちに対する音楽的な信頼が、いかに深かったかの証でも有るのだろう。彼の意識のなかでクララとエリーザベトは、もはや分かち難い存在だったのだ。
 作品121の“四つの厳粛な歌”は聖書から言葉が選ばれているバス独唱のための曲である。1892年にエリーザベトが45歳の若さで没し、クララの命もあと僅かという1896年の5月、ブラームスの63歳の誕生日に彼の家を訪れた友人に、彼は、自分の誕生日のお祝いに書いた、と言ってこの曲の草稿を見せた。
 その3曲目の詞はこう歌われる。「……。おお死よ、何というおまえの快さ、飢えたものには、年老いて弱く、苦労ばかりで、よりよい希望ももはや残されていない人間には……。」と、死を身近なものとして歌うが、終曲の詞はパウロの「コリント人への手紙」から採られ、「たとえ私が人間の言葉、天使の言葉で語ったとて、愛がなければ、やかましい鐘、騒がしい鈴とかわりはない。……。永遠に残るのは、信仰と希望と愛のこの三つ、そして愛こそが、その中のもっとも大いなるものなのだ。」と愛を讃美して結ぶ。
 かつてエリーザベトによって霊感を与えられたと云われる作品32の歌曲“わが王女、君は喜びにみちて”は“四つの…”の終曲と調性も同じ Es-dur 。そして結びの3小節は全く同じ音型で作られている。“四つの厳粛な歌”は、愛する者たちへの、もう一つのレクイエムなのだろうか。 (完)


第15回役員会報告         2002.8.31 明治公民館
 
【*】次期ドヴォルザーク期の日程について
  ・2002年12月14日(土)クリスマス・コンサート
  ・2003年 9月28日(日)本 番

 
 
“ドイツ・レクイエム”(ライブ録音!)CD販売ついて 
 
  今年も完全申込み制です。
  
代金を添えて、各パート担当へお申し込み下さい。
  追加販売はできませんのでご注意下さい。
                    (担当:S 堀、A 斉藤、T・B 大倉) 
 
次期演奏会曲ドヴォルザーク “スタバト・マーテル” 楽譜販売中  
 
  ドヴォルザーク“スタバト・マーテル”の楽譜を販売しています。
  1冊 ¥3,000 です。               (担当:B 鈴木)
 


演奏会がおわると… クリコンの練習 が は・じ・ま・り マス>  
 ★ 楽譜はそろってますか?
   * カンタータBWV147 コラール(バッハ)
   * Have yourself Merry Little Christmas (ブレイン)
   * The Lord bless you and keep you (ラター)
   * キャロルは流れる (矢野義明編曲)
   * 聖なる都 (アダムス)
 ・曲順はまだ決定していませんが、クリコン用の黒のバインダーに綴じておき
  ましょう。(楽譜、黒のバインダーをまだお持ちでない方は A. 青山まで)

 ★ 音取りは大丈夫ですか?

 ・演奏会がおわるともうクリコンの2ヶ月前。練習回数も9回しかありません。
  1回1回の練習を充実したものにできるよう、音取り、言葉つけなどは、
  各自の責任で準備して臨みましょう。明治公民館で練習がある時には、5時
  よりパートリーダーによる自主練習を行っています。ご参加下さい。

 ★ 湘フィルのクリコンって…(新しく入団された方へ)

 ・湘フィルが茅ヶ崎カトリック教会をお借りし、教会の強力なバックアップの
  もと、毎年行っているクリスマス・コンサート。今年で12回目になります。
  当初よりチャリティーコンサートとして、純益+献金を様々な被災地の方々
  へ送ってきました。(皆さんのお志で、例年20万円近くにもなります。)
  本番のステージとは一味違った、手作りのアットホームなコンサートです。
  毎年、楽しみに聴きに来て下さる方も年々増えてきています。今年度から、
  茅ヶ崎教会の主任司祭が松村先生のグロリア時代の後輩でもあられる、鈴木
  神父様に代わられました。今年も心のこもった温かいコンサートにしていき
  たいですね。




 新 入 団 員 紹 介
 今期入られた方にアンケートに答えて頂き
 ました。 質問内容は、次の3つです。
 @ 湘フィルを何で知ったか?
 A 湘フィルに入ってよかったと思うこと
 B 思い出の曲 or 歌ってみたい曲
立川良介さん (Bas.)

@ 朝日新聞の広告&HPを見て
A 松村先生はじめ、皆さんのキチンとした
   ご指導ぶり。

B モーツァルト 「レクイエム」「魔笛」が印象的  です。その他に ワーグナー「ローエングリーン」 「タンホイザー」等も歌ってみたいです。
相馬晴子さん (Sop.)

@ 両親が大変お世話になって居ります。
A この練習時間だけ、ブラームスの美しい 世界に浸れたこと。
杉浦正子さん (Alt.)

@ 友人がタウンテレビの広告を見て誘って
  くれました。
A ご指導なさる松村先生の音楽性(評判以
  上のものでした。)に感服致しました。

斎藤先生のボイトレも今迄にない適切なもので、すっかり魅了されました。又団の組織もしっかりしているようにお見うけします。(団員の方は皆様ご親切)
B フォーレ「レクイエム」 ウ゛ェルディ「レクイエム」 「聖パウロ」沢山あります。「クリスマス・オ ラトリオ」を歌ってみたいと思います。
小泉正幸さん (Ten.)

@ 団員に誘われて
A 松村先生、斎藤先生のご指導で歌えるこ と。100人以上で歌え、レベルが高いこと。 自分も上手くなりたいと思いました。
B 子供のころ、両親がコーラスをやっていま  して、コンクールで聴いた「大地讃頌」が心 に残っている曲です。 



 2002年10・11月の練習日程 
10月   1日(火)

  4日(金)






  5日(土)




12日(土)
19日(土)
26日(土)  
鎌倉芸術館大ホール    18:15 〜 発声
   <オーケストラ合わせ> 19:00 〜 21:00
★ 鎌倉芸術館大ホール   18:15 〜 発声
   <オーケストラ合わせ> 19:00 〜 21:00
集合は3Fリハーサル室。受付は18:00より。事務手続き(チケット取り
  扱い等)は極力事前に済ませ、舞台に上がったら私語を慎
ましょう。


   横浜みなとみらいホール   集合 12:00
    “ドイツ・レクイエム”  (詳しい日程は別紙参照
    “運命の女神の歌”     号外が出ています。)

   明治公民館        18:15 〜 21:00
※ 御成小多目的ルーム  18:15 〜 20:45
   明治公民館       18:15 〜 21:00 
 
11月
  2日(土)
  9日(土)
16日(土)
23日(土)
30日(土)

   明治公民館        18:15 〜 21:00

※ 御成小多目的ルーム  18:15 〜 20:45
   明治公民館        18:15 〜 21:00
   玉縄公民館        18:15 〜 21:00
   リリスホール        18:15 〜 21:30
    ※ 御成小(鎌倉市立御成小学校)多目的ルーム(JR「鎌倉」駅より徒歩5分。)
      ・正門からではなく、中央図書館側の入り口よりお入り下さい。(3号館)
       入り口入って左側へお進み下さい。

      ・校内での駐車は出来ません。鎌倉駅周辺の駐車場をご利用下さい。

      ・
スリッパ持参のこと。   <詳しい地図が必要な方はS柏木まで。>