湘フィル通信
Vol. 14 No. 11(Total 182 外 12)
発行日:2002.3.16 編集: 寺部、青山
2002年3月号
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それに伴う暗譜能力の向上
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これはブラームス最後の管弦楽を伴った合唱曲である。1882年の夏にイシュルで作曲され、9月末までに完成したようである。歌詞はゲーテの戯曲『タウリスのイフゲーニェ』から採られているが、ブラームスはウィーンのブルク劇場で、この劇の見事な上演を見て感動し、それがこの曲の作曲の動機となったのではないかといわれている。 ゲーテの戯曲は、ギリシアのオイリピデスの悲劇に基づいている。しかし、これは翻訳ではなく、オイリピデスの作品を自由に脚色し、書き改めたものである。 『運命の女神の歌』は第4幕にあり、故郷から追放されてタウリス島に流されたイフゲーニェのモノローグである。その内容は人間を支配する神々の非情さを語ったものである。混声6部合唱と2管編成の管弦楽のために作曲され、マイニンゲンのゲオルク公爵に捧げられた。初演は1882年12月10日にバーゼルでブラームス自身の指揮で行なわれた。 (ヘルベルト・ブロムシュテット サンフランシスコS.O.Cho.のCD解説より) |
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テキストの根本思想は、「運命の神々は無慈悲なもので、人間に特に同情して何かをしてくれるということはない。その無慈悲な扱いの前には、人間はまったく無力である」というものです。しかし、ブラームスは、必ずしもそれに忠実ではなく、最後の詩の節は、ニ長調でドルチェ(優しく)となっていて、その前の部分までは厳しくて陰鬱で不機嫌な音楽を書いているのに、終わりは明るくとまではいわないまでも優しく結ばれます。そのため、この曲の初演以来、詩の精神と合わないじゃないかという批判があったんだそうですが、ブラームス自身は、「皆いろんなことを言っているけれど、それは先入観にとらわれた聴き方でしかなく、ぼくが終わりのところで長調に入った音楽を書いたことにより、それを聴いた人の心が和らいで、涙を浮かべることになるだろう。そういう風にして人間の悲しみを皆が受けとめてくれるような、そういう曲にしたんだ」と言って、平気だったそうです。 (吉田秀和 『ブラームス 生涯と作品』より) |
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『運命の女神の歌』の背景 この歌はゲーテ作詞、ギリシャ伝説に基づく古典劇『タウリスのイフィゲニー』 の第4幕で歌われることになっている。話は紀元前1,200年トロイ戦争の時 代まで遡る。この戦争はギリシャ本国とエーゲ海を挟んで対立するトルコ西岸の 植民としの覇権争奪戦である。 トロイの王子パリスがギリシアのスパルタの客となっていた時、スパルタ王メ ネラウスの不在中その妃で絶世の美女ヘレネに恋し、彼女と財宝を奪ってトロイ に帰ってしまった。ギリシャ人は怒った。そこで遠征軍を出すことになりミケーネ王アガメムノンの総指揮の下に2年間の準備の後ギリシャ都市国家群は軍船 1,800隻、兵隊10万人の大軍をギリシャ本土のアウリス港に集結した。 10年に及ぶトロイ戦争のはじまりである。 然し大軍は集まったが大将アガメムノンに神をおそれない言動があったとして 女神アルテミスの怒りにふれ、軍隊に疫病が流行し、風向きが全くの逆風か、無 風で出発出来ない。そこで神宮を通じて神意を問うたところ、大将アガメムノン の娘イフィゲニーを人身御供として差し出さねばならぬと云う。将軍は戦争の全 責任者としてギリシャのために軍を進めることに決心し、本国に居た娘イフィゲ ニーを呼び出し、女神アルテミスに捧げることにした。その祭事進行中、間一髪 犠牲となった娘は女神の手で牝鹿にとりかえられ、娘は雲に包まれてクリミヤ半 島のタウリスに運ばれた。そこで女神の怒りはおさまり、軍船は順風に恵まれて、 ギリシャ軍はトロイに上陸した。イフィゲニーは神殿の巫女となり『人間よ、 神々をおそれよ』と運命の神々の無慈悲と人間の無力さを歌う(歌詞対訳参照)。 然し彼女はその後色々あって遂にタウリスを脱出し、ギリシャ本国に帰国。終 生女神官として神に仕えたと云うお話である。一方トロイ戦争は10年の間色々 な勝敗があったが、最後にギリシャ軍の木馬と云う計略でトロイは敗北し、ギリ シャが勝利した。その後紀元1870年代にシュリーマンによってトロイ城跡が 発見されるまでは昔話の世界の物語となっていたのである。 (B.山口 太郎) |
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運命の女神(3姉妹) 〜 ローマ神話 〜
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運命の女神もまた三人(註)で、クロトと、ラケシスと、アトロポスと呼ばれました。 彼らの役目は人間の運命の糸をつむぐことで、大きな鋏を持って、いつでも気のむきし だいその糸をたち切りました。これらの女神は、ゼウスの顧問としてその玉座に列席す ることを許されていたテミスの娘たちでありました。 (「ギリシア・ローマ神話」 ブルフィンチ著・野上弥生子訳 岩波文庫) (註)美の女神たちや復讐の女神たちも共に三人。 (B.益田 寛治) |
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