●告白                                                

   
                          nonya  

あのさ
君にはずっと黙っていたんだけど
実はね
僕は土星人と暮らしているんだ
あっ
いつものつまらないジョークなんかじゃないよ
それと
僕はたぶん正気だから心配しないで
えっ
ヒマだから話につきあってくれるって
それなら
本気で告白しちゃおうかなあ

ってことで

彼は地球でいうところの男
なんだと思う
彼は地球でいうところの子供
なんだと思う

彼は茶の間の敷居の上に
パイオニアとボイジャー1号&2号を
等間隔にきっちりと並べないと気が済まない

彼は冷蔵庫のフリーザーを
ひっきりなしに開け放っては
−180度を懸命に探し当てようとしている

彼は新聞の折込チラシを
極めて細長く切り裂いては
カッシーニの間隙を作り出すことに余念がない

彼は電線に引っかかった月を見て
小刻みに飛び跳ねながら
タイタンでの小旅行の想い出に浸っている

彼がたまに耳をふさいでしゃがみこんでしまうのは
地球の空気があまりも濃厚で重すぎるから
水素とヘリウムの希薄な海を泳いでいたからね

彼がときどき自分の拳で自分の頭を叩くのは
壊れた言語変換装置を直そうとしているから
僕はまだ彼から名前で呼ばれたことがない

てなわけだけど

君はまだ笑っているんだね
まあそれでいいんだと思うよ
有り得ない事を受け止めようとしたら
もう笑うしかないものね

でもね笑ってばかりもいられないよ
告白って自分の重さを相手に
無理矢理シュミレートさせることだから
もしかしたら君には重すぎるかもしれない

えっ
何の音だって?
実は彼がもうすぐここにやって来るんだ
今日はずいぶん興奮しているみたいで
ハ行のパラメーターが上がっている

えっ
どうすればいいかって?
君は普通に地球語で話せばいい
無理して友達になろうとしなくていいから
君は普通に地球人でいればいい

あくまでも
普通でいいんだよ
なによりも
普通がいいんだよ