●秋の再発見                                             

   
                                   宮本まるか  

レモンイエローの落魄
面前でわくら葉が一葉
夏の強い陽射しが照りつける街路に
音もなく落ちたその時
僕は予期していた
この日が来ることを


季節は早や晩秋
宙に舞い地に積もる落葉一葉一葉に
在りし日のあなたの姿 表情を見とることのできる
−幻視の氾濫−
街の片隅に拡がる光景の壮麗さを
伝えようとして窮し 肩を震わせ 
降りしきる紅葉一葉一葉を裏返してみても


花のかんばせを想わせるあなたの顔立 容姿はそこになく
あの夏の日に見た妙齢のわくら葉を最後に悄然と
濡れた路面からぬぐい去れば もう二度と血のかよわぬ
透き通った白蝋の肌に不意に指先が触れ
枯葉の湖面に波紋が拡がり
微風があなたの黒髪・艶やかな草木をそよがせはするが


青いさざ波はもはやうち寄せる岸辺をもたず
残された者の足もとに色褪せたわくら葉が
音もなく降り積もり
過去の残像をただいたずらに覆い
レモンイエローの湖底に沈みゆく心は いつまでも
夏の日の葉陰であなたを追い求め茫洋