[01] 端子短詩:1
早朝 気管支炎の煙突が 咳をする
それでも背筋は伸ばしておかないと
まっすぐに 煙 吐き出せないものだから
頑なに それにしても 感心 だな
[02]端子短詩:2
年代物のブラウン管に
砂嵐が吹き荒れる瞬間と同時に
断罪の時間が始まる
打ち捨てられた一昔前の機械の小さな部品
耳のちぎれたウサギのぬいぐるみ
カップ焼きそばの食べかす
悪意ある忘却を遮る術は
ただひたすら書き続けるのみ
[03]端子短詩:3
永訣の朝に ミルクを飲んで
今生の夜に ナイフを研いだ
蒼い羽虫の ささやきごとも
紅い口から 流れることも
あるようで なし ないようで あり
それを なんと呼ぼうか
[04]端子短詩:4
各駅停車の瑠璃色列車
暴走半島、流星列車
連結部分に感傷オイル
カンカカカン と 踏切の音
[05]端子短詩:5
色んなコトを忘れた
笑顔を忘れた
夕焼けを忘れた
取りに帰ろうとした
[06]端子短詩:6
うたおぅうたおぅ軟泥(ヘドロ)の中で
あの子ぉあの子ぉ狐のお面
ちんたらちちんと指切って
ヨウドチンキを塗りたくるのだわわ
[07]端子短詩:7
闇に 光を
果ての果てまで 果ての果てまで
[08]端子短詩:8
赤く赤く燃え上がり
乾燥しきった詩情に引火して
また更に激しく激しく燃えていく
僕の頭のてっぺんから濃い黒い煙となり
もくもくもくもく渦巻いて渦巻いて
虜になりすぎた、囚われの身である
鍵は君が持っている
鍵をください 不特定多数の「君」
[09]端子短詩:9
街角の電柱に
僕は
帽子を
かぶせてあげたい
と思いました
[10]端子短詩:10
気が付けば
僕もひとりだった?見渡せば
僕もひとりだった?
いや、人はたくさんいた
僕は目を塞いでいただけだった