[01]部屋 「ヘヤ」
ボク は 外側が ボク である
ヘヤ は 内側が ボク である
それが
ボク と ヘヤ との
相違点
[02]部屋 「ワタシ」
ワタシはたかぼ
名前はない
昨日会ったばかりの男だ
[03]部屋 「マド」
僕の部屋には大きな貼り紙があって
窓と名乗っている
ときどきそいつをはがしてはあっちへ貼ったり
こっちへ貼ったりして遊んでいたのだが
ある日ふとしたはずみに
僕の胸に貼ってしまった
もう貼り替えるのにも飽きてしまったので
そのままにしている
[04]部屋 「アレ」
11号室にはあれがないので
走るだろう
話はついでだが
保存できないし
例の場所には 誰もいなかった
[05]部屋 「ドア」
ところでこのドアはいつ開くのだろう
あけてもあけてもドアがある
うしろには私に開けられて腐ってゆく
かわいそうなドアたちの死骸が連なる
[06]部屋 「ローソク」
<一>
揺れているローソクを見つめていた
下の方からだんだんさめていくトビラ
窓を開けようか
どこかでこんな事あった?
君の顔知っている
言いたい事あったけど
忘れちゃった
<二>
君の肌は小麦色
蒼いドレスを着せて鏡の部屋に連れていったら
ローソクが嫌いだなんておかしいじゃないか
びっくりしちゃったんだろう
だって僕ったら逆さまなんだもの
言いたい事なんて
全部忘れちゃった
[07]部屋 「ナイフ」
あなたがいつか私のへやで
私を見つめていたならば
私はまるで大きなヨットのようですね
と少年は少女の事実を額に感じながら
静かにつぶやいた
その声は琥珀のように滑らかで
しかもうす緑色をしていて
翳を引き裂くナイフのように官能的だった
[08]部屋 「ヤミ」
もうそろそろボクも
ヘヤとしての個立を始めなければならない
夜も更けてきたし
さて夜の方はと言うと
闇の中で常に幸福だった
問題はボクの方にあった
闇にコラージュされたボクの個体!