その214 「ぼくの好きな先生、ぼくの好きなおじさん

ぼくとへびねこさんがお世話になっている
太宰府の子供の本専門店赤とんぼさん主催で
児童文学研究家の鳥越信先生の講演会が13日から3日間ありました。
ちょうど土日祝日の3連休でぼくも休みだったので
参加してみることにしたのでした。

会場が博多駅前のホテルだったので、ついつい通勤のノリでバスに乗ると
道はガラガラであっという間に着いてしまった。
ちょっと本屋さんで立ち読みして時間を潰してみたりして
30分前に会場に向かいます。
赤とんぼの高橋さんが参加者に配るチラシなんかを準備してましたので
「おはようございます、なんか手伝いましょうか?」と申し出ましたら…
本の売り子役任命。
3日間、講演の合間あいまに本を売るぼく、ばり緊張。
本のスリット抜き忘れたり、消費税の計算間違えたり、
高橋さんの息子さんだと思われてたりしながら
お店屋さんごっこレベルの接客で対応し、大いに笑いをとる。
おいっ、笑いをとってどうするよ、俺。

へっぽこ売り子となったぼくは、仰せつかった仕事をなんとかこなしつつ
鳥越先生の講演会に望みます。
とはいえ、くまのプーさんも星の王子様も満足に読んだことのない
読書嫌いのぼくが児童文学の講演を満足に聞くことができるのだろうか。
しかも講演1コマ2時間30分。
高確率で自分にラリホー(睡眠魔法)を発動させてしまう予感が。
かなり場違いな所に来てしまったのでは!!?
といろいろ考えてるうちに講演、というよりも授業が始まりました。



あ〜、楽しかったあ。3日間あっという間でした。
鳥越先生は73才というご高齢の上、昨年ガンの手術をされたと
聞いていたのですがそりゃもう元気元気、とてもそんなんには見えなかった。
児童文学にまつわるお話はもちろんですが、
元岩波書店の編集者で元早稲田大学の先生だったりしたので
(現在は兵庫県にある聖和大学大学院の先生もやっておられるそうです
 博士論文のテーマがアニメやゲームってこともよくあるそう、生徒になりたい )
その頃の裏話も満載で、へぇ〜の嵐。
トリビアに投稿しようかしら。
参加人数も15〜16人くらいの少人数だったので先生との距離が近くて
とてもよかった。
もっと多くの人に聞いてもらいたかった気もするけど何百人もの人相手だと
ああはいかんだろうなあ。いやよかったよほんとに。
2日目には高橋さんの計らいで夕食会にお呼ばれしていっしょに
ベトナム料理をゴチになり(野菜多くてちょっと困ったけど美味しかった)
2次会のカラオケまで連れて行かれ、先生の見事な歌いっぷりを見て感動。
ド演歌やらピンクレディーやら歌っておられる。
ぼくは久しく歌ってなかったので大人しくしていようと思ったのですが
高橋さんがガンガン歌いなさいとリモコンを渡すので
トホホと思いながらも開き直って誰も知らないであろう
奥田民生や山崎まさよしちゃんやらスピッツやらを勝手に歌いまくる。
すると先生、「わたしね、女性歌手には興味あるんですよ」と
ヒッキーやあゆやモー娘は歌えるかと聞いてこられてもうビックリ。
参りました。
なんでもキャンディーズの大ファンで解散コンサートにも行かれて
ランちゃんやめないで〜、スーちゃんやめないで〜、と叫んでたそうです。
先生、そのころすでに40才は越えていらしゃったのではないでしょうか…
すごいなあ、ぼくも学生時代にこんな先生に出会ってたら
もっと違った人生を歩んでいたかも知れんなあ。

先生がいろいろ話された中で印象深かったのが

300冊ある本棚から1冊選んで子供に渡す、という中に
どれだけ教育的営みがあるか

ということをおっしゃられたんだけど、うんうん全くその通り。
ぼくは教育者でもなんでもないけれど、1冊の本の持つ力、と言いますか
まあぼく自身自らが偶然手にした「キャベツくん」によって人生を
大いに狂わされた(いい意味でね)体験者としてね、十分感じていたし、
それまででもよく絵本を好きな女の子へ贈ったりしてましたし、
最近だと本じゃないけど好きな人、大切なひとに自分の絵を贈ったり
絵手紙を出したりしますが、照れを隠して何気ないふりをしつつ
“はいっ”と渡す動作の中に、相手の性格とか好みとか近況とか考えながら
「こんな絵本好きかな」「こんな色かな」「喜んでくれるといいな」
「ほっとするといいね」「大丈夫だよ」「大好きだよ」なんて想いが
こもっていたりいなかったり…
まあそんなことよくするもんですからね、
面白い授業ができる、とか、何人東大に入れた、とかよりも
その子が読むか読まないかは別としてその子のために
“1冊の本を選んであげる”の方が愛があるなあ、と。
そういうことを何気なくできる先生がいるならかっこええなあ、と。
ぼくはそんな先生、とても信用できるなあ、尊敬できるなあと思います。
気付けばもう30越えてしまってますが、ぼくはこの年になって
先生、と呼べる方に出会えたような気がします。
素直ではない、というか、ひとの話を100%信用して信仰のようになって
思考停止に陥るよりも、賛否50%50%位にして
ああでもなくこうでもなく考えているのが好きなぼくには
今回の鳥越先生のお話はゆらゆらするのにとても心地よかった。
もし次回、この講座が開かれることがあったら是非参加したいです。
ちょっとだけ児童文学方面も勉強して参加させていただきます。
どうかそれまでお元気でいてくださいますように。
高橋さん、よい出会いをありがとう。