その149 「猫三味線

電車に乗って、太宰府方面へ。
今日は「猫三味線」という紙芝居を見に行くのです。
ぼくがへびねこちゃんを連載している赤とんぼさんの主催で
ぼくは連載させてもらっときながら赤とんぼの御主人・高橋さんに
お会いしたことがなかったので丁度いい機会だと思い
見に行くことにしたのでした。

送ってもらった地図を頼りに会場の公民館へ。
こんなとこ来るの、小学生以来かもしんないなあ。
中に入り階段を昇ると会場。
切符を買い、会場をウロウロしていると
“AKATONBO”と書いてあるTシャツを着た高橋さんらしき人物が
お忙しそうにしていらしたのだけれど、
ぼくは人に話し掛けるのがとても苦手なので
(出来ないといってもいい、だからナンパなんてしたことありません)
講演が終わってからにしようかな、と思い会場をウロウロ。
紙芝居の前座を勤める飯野和好さんの絵本が平積んであったりしたので
いろいろ眺めてるうちに欲しくなる。
が、おもいっきり給料前で、ここに来るだけでも
いっぱいいっぱいだったので見るだけ、フグッ。
開演時間も近づいてきたので席へ。一番前のはしっこで見ることにする。
席は3分の1ほどしか埋まってなく、ちょっと悲しくなる。
そうこうしてるうちに開演時間となりまして旅人姿の飯野さん登場。
まったくもって素敵である。
作者自身による“ねぎぼうずのあさたろう”の朗読、というか小芝居。
まったくもってもって最高である。
芸達者だなあ、ぼくにはとても真似出来そうにありません。
あさたろうの4巻目が春に出るといううれしいお話も聞け、
ホクホク大満足のオープニングアクト終了。
いよいよ猫三味線が始まります。
なんでも50年ほど前の作品で、約600枚ほどある作品を
3時間かけて一挙公開という凄まじきイベント。
これを一人で取り仕切るは梅田佳声さん、75才。
まったくもって恐るべし。

大体のあらすじはこう。
高大之進というとてもかっちょよくて腕も立つ浪人が
甲州大月の宿で相部屋になった江戸の商人・江戸家喜助を殺害、
お金を盗んで江戸へ。
江戸家に向い、残された奥方と娘に取り入って娘婿になり乗っ取り成功。
しだいに本性をあらわし江戸家2代目としてやりたい放題。
しかし、喜助の可愛がってたねこのお玉だけはこの事に気づき、
主人の敵討ちとばかり妨害工作にでるも、最後は殺されてしまい
三味線の皮にされてしまいます。
お玉の霊魂は大之進と江戸家の娘・お光の間に出来た娘に乗り移ります。
出産の時、生まれてきた赤ん坊がねこ顔なのにおどろいて
奥方転倒、あんどんを倒して大火事になってしまいます。
悪いことは重なるもんです。
番頭の藤吉が命からがら赤ん坊を連れて逃げますが
逃げる途中で愛人宅から帰ってきた大之進に遭遇。
赤ん坊の顔を見るやいなや切り掛かり、藤吉は川へ転落。
藤吉、なんとか自宅の近くかまで辿り着くも傷は深く力尽きます。
藤吉は霊魂となり、娘のお時に赤ん坊を託すと昇天。
お時はこっそり大切にねこ顔の赤ん坊を育てます。
時は過ぎ、赤ん坊も子供に成長、その容姿まさにねこ娘。
いろいろあり自分の出生の秘密をしったねこ娘お玉は
今や江戸家2代目として愛人を本妻に迎え、二人の子供と共に
幸せいっぱいの父であり仇である大之進に復讐を誓うのでした…
とまあ、こんな感じ。どう?面白そうでしょう。
それをぼくは、これから見るのです、ウッシッシ。

終わりました。
ひょえ〜、長かったあ。
でも面白かった、ていうか紙芝居の絵、ばり上手い。
ハイパー劇画風ですごい。ディティールも完璧。まじ凄い。
これはちょっと画集とかにして発売してほしい。
そして梅田さんの3時間に渡る熱演、感激しました。
ありがとう。
途中1・2巻欠番があったり、絵が何枚か欠けてたりして
もはや再現不能、永遠のミッシングリンクとなっておるのですが
その部分を自分なりに考えたりできて、かえって楽しかったです。

終演後、なんとか高橋さんに話し掛けて御挨拶。
とても暖かくバイタリティ溢れる方でした。
対するわたくし、どうしてこうも人と接するのが下手なんでしょう。
いや、たっぷり時間をかければなんとかなるんだけど…

我慢出来ず絵本購入、「赤ずきんちゃん」。
楓さん用にサインを所望。
でも、なんか、こうね、やっぱ自分も作家を目指す身でありますから…
サイン貰うのこっぱずかしいです。
でもこんなきっかけでもないと上手く話し掛けられない
へたれなぼくなので、やっぱりサインを所望。
スラスラと出来ていく赤ずきんちゃんに見とれながら
2・3こと言葉を交わしておりますと、後ろから高橋さんが
「もう自己紹介した?」とひとこと。
へびねこちゃんの作家さんですと紹介され、
慌ててぼくもへびねこちゃんの作者ですと申しますと
「ああそうですか、あれ好きですよ」
(なんてこといわれたような気がしますがよく憶えてません)
などと言われてドキドキ。
全然頑張ってない自分を省みつつ心の中で
「飯野さん、ありがとうございます。死ぬ気で頑張ります」と呟く。
そのあと交流会に呼ばれ、同じ通信に連載している川口さんと話し
(こちらも初対面)
梅田さんの話を聞きながら少し料理を、少しビールをいただく。
こういった場もとても苦手なので、ただただ人の話を聞いていましたが
ひとの雰囲気とか空気とかを見ることには長けているので楽しかった。
高橋さんも梅田さんも飯野さんもほんとに素晴らしい方だ。

みなさんに別れを告げ、電車に乗り、バスに乗り、自宅が近づくと
一気に緊張が解け気分が悪くなる。
(さらに慣れない飲酒と、バス待ちのバス停で燃えていた
 灰皿の煙とバスの揺れが追い討ちだった模様)
なんとか家に帰りつくと家族入浴中。ぼくはトイレで逆噴射。
湯気ホクホクの楓さんに赤ずきんちゃんをわたすと大変喜ばれ、
中身の赤ずきんちゃんを見るなり
「うわあ、かえでだぁ!!」
とさらに大喜びされて、うれしいんだけどなんか悔しい。
おれももっといい絵を描くぞと思う…
そばから気持ち悪くなりさらに逆噴射。
もう限界なので、速攻でフロに入り、晩ごはんも食べずにバタンキュー。
そして朝、早起きしてこれを書く。そろそろ会社の時間です。
まだちょっときもち悪いです。