その110 「涙は」
博多では4月3日頃までお雛様を飾っておいても良いのだが
それでは人形達の身が持たない。すでに何名かは
太鼓のバチはむしられ、頭の飾りをむしられしていて
非常に危険なのでもうしまうわ、と相方が申すので
楓さんを連れてバスに乗って公園へ行く。
「これで最後よ」「うん、あと一回でさいごぉ」
という会話を何十回と繰り返しながら滑り台の階段を一段ずつ
数えながらのぼります。全部で12段でした。
そういえば、昔ゲーセンでのぼらんかというシューティングが
ありましたが知ってる人は皆無でしょう。(ちなみにDECOゲ−)
それはさておきどうにもこうにもお腹が空いてきたので
「ほんとに最後だからね」と念を押して最後のひと滑り。
「じゃあ、行こうか」と言いましたら、その場にしゃがみ込んで
お砂遊びを始めたのでこりゃたまらんと、楓さん小脇に抱えて猛ダッシュ。
公園を脱出します。楓さんは暴れます。
しかしある程度遠のくと大人しくなったので
「ごはん食べよっか」と聞くと「サッカーみる」と言ってグランドの方へ。
練習してる兄ちゃんたちがゴールを決めると
「やったぁ、ごぉ〜るぅ」と大騒ぎ。
たぶん、ぼくより兄ちゃん達の方が恥ずかしかったことでしょう。
すまぬ、練習の邪魔して。
見るのはすぐ飽きたようで、やっとこさ二人で商店街の方へ
シロツメクサなどをむしりつつトコトコと向います。
なにを食べようかとウロウロしてますと楓さんが
「おこのみやき、たべるぅ」「ごはん、たべるぅ」
と宣いまして、仕方がないので3日前にいったばかりのお店へ
行ってお好み焼き定食を注文する。店の兄ちゃんにちょっと笑われる。
いつもは青ノリ・マスタード・マヨネーズ・かつおぶしは
かけてもよいか?と聞かれるのに今日は聞かれなかったので
おかしいなと思いつつ、まあ連チャンだからな、
などとなんとなく納得しながら待っておりますと
ソースだけ塗られたお好み焼きが出てきまして
「青ノリ・かつお節などはお好みでお使い下さい」と言うではないか!?
まずい!非常にまずい。そんなこと楓さんの目の前でしようもんなら
青のりどっばぁ、マヨネーズどろどろに大放出で
カラダバランス飲料DAKARAでも追いつけないことになってしまう。
が、お店の人はもういってしまった。
仕方が無いので青ノリをふりかけ、マヨネーズをかけ
かつお節をのっけて「食べようか」と楓さんを見ますと
予想通り目を輝かせております。
そしてこれまた予想通り、小さく切ってあげたお好み焼きひとつひとつに
マヨネーズをかけろとの要求。
最初のうちは仕方なくかけてあげましたが
だんだんめんどくさくなってきたので、ひそひそ声で
「あんましかけるとね、お店の人に怒られるんだよ」と言いましたら
楓さん、シュンとして、うつむいて、じんわり泣きはじめたではありませんか。
いつのまにそのような女の武器を手に入れたのか!?と思いつつ、
ぼくは慌てて「大丈夫、大丈夫、いっぱいかけていいからね」と
めそめそ泣いている楓さんをなだめてマヨネーズをかけていたのでした。
楓さんはその後、マヨたっぷりのお好み焼きモリモリ食べまして
ごはんもモリモリ食べまして、お店を出た後もきびだんごを買ってもらって
ごきげんさん、だんごを自分で持つといいますので渡していたら
地面に引きずるもんだから、ビニールにちっちゃい穴が空きまして
きなこをぼろぼろまき散らしながらスーパーで買い物して帰りました。
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