その98 「水芸

楓さんが、マーライオンのように吐くのです。
オエッとも、ウエッとも言わず直立不動で
シャー、シャー、シャーと3回吐いたのです。
ぼくはその姿をジーッと見てしまったのです。
ハッと我に帰り、絨毯をみるとえらいことに。
あわてて雑巾絞って絨毯を拭いたのです。
とてもとても酸っぱいにおいがするのです。
楓さんはすっきりした様子で立ち尽くしています。
ぼくは絨毯をゴシゴシ拭いています。
相方が服を脱がせて、ぼくがお風呂に連れてきます。
ちょっとお熱が高いので、体をさっと洗います。
でも、ちょっと前にうんちをしましたので
おしりはゴシゴシ洗います。
急いで拭いて着替えます。
楓さん、かなりスッキリしたご様子。「お腹空いた」とのたまいます。
こちらの、吐いたそばから…という心配をよそに
お茶をグビグビのみまして
ごはんモグモグ食べまして
みかんゼリーのみかんだけ
リンゴゼリーのりんごだけ
ムシャムシャパクパク食べまして
なにごともなかったかのように遊びます。
ぼくもいっしょに遊びます。
絨毯はまだジットリしてて
部屋はまだちょっと酸っぱいです。