26冊目 「ジャリおじさん」
えとぶん おおたけ しんろう
福音館書店
大竹伸朗さんは現代の芸術家さんです。
だから大竹伸朗さんが作った絵本は、芸術です。
現代の芸術だから難しいのかなあ、と思ったりもしましたが
なんてことない、絵本です。
絵本だから子供だましなのかも、とも思ったりしましたが
とんでもない、絵本は究極です。
大竹伸朗さんの絵本、よかったです。
海を見て暮らしていたジャリおじさんが
ふりむいて見つけた黄色い道をどんどこ歩いていく
ロードムービーのような絵本です。
ピンクのわにとかあおゾウさんとかタイコおじさんとか
いろいろへんなものと出会います。
大竹さん、ひょっとするとお話、いきあたりばったり!?(笑)
素敵な絵を描く絵本画家さんはほんとにたくさんいますが
大竹さんの描く絵というのはまたひと味違って刺激的。
線の一本一本にしびれます。
そして絵本というジャンルの懐の深さにも感激。
異種格闘技戦の舞台としても秀逸。
芸術界のUFC(※1)かもしれません。すごいぞ絵本。
とにかくこの絵本、一度見ておいた方がいいと思うよ。
それからジャリおじさん、なんか絵本の賞もらってます。
ジャリおじさんがちゃんと賞をもらえるってのも素敵です。
世の中まだまだすてたもんじゃないのかもしれません。
がんばれ、絵本。
※1…UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)
オクタゴンと呼ばれる金網に囲まれた八角形のリングの中で
目潰しや金的攻撃など最低限の反則以外はなんでもありの格闘技。
逃げ場のない金網の中ですべてを尽くして戦う男たちの姿は圧巻。
絵本というフィールドも子供のためという金網の中のような
ものだなあ、なんて勝手に思ったりしちゃったりして。
そんな中すべてを出し尽くしてくれている絵本作家さんてのは
やっぱりすごい戦士だなあ、と思ったりもしています。
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