読売新聞戦争責任検証研究会:検証 戦争責任T・U(中央公論新社)
★★★★
責任というのは果たすべき相手がいるものである。従って、一口に「戦争責任」と言っても、アメリカに対してなのか、中国に対してなのか、それとも日本国民に対してなのかによってその意味するところが全く異なってくる。
また、何に対する責任を問うのかによっても性格を異にする。戦争を始めたことに対してなのか、拙い戦略によって多大な被害をもたらしたことに対してなのか、他国に侵略をしたことに対してなのか。
これらのことを一括りにして、「誰それに戦争責任はあるか」と問うたところで、それは答えのない質問である。現在に至るまで戦争責任に関する論議が今ひとつ煮え切らないというか、要領を得ないのはまさにこの点のフォーカスがぼやけているからに他ならない。
本書の優れている点は、開戦に至るまでの道程から、開戦、戦中の指導体制、終戦に至るまでを細分し、ポイントごとに誰にどういった点で責任があるかを明確にしているところである。そして、その責任の対象を主に日本国に対してに絞っている点も大いに評価できる。先の大戦における責任について我々日本人が考える場合、誰が日本をめちゃくちゃにしたのかを追及するのが最も重要な課題である。
編纂が読売の手になるということで、正々堂々としたタイトルに反して論調に偏向の見られる陳腐なものに終わるのではないかと危惧していたが、事実の積み上げによる検証作業に腐心しており、詳しい歴史を知らぬ者にも分かり易い内容になっている。歴史事実を確認する目的だけでも、一読に値すると思われる。
責任とは原因と結果によってのみ生まれるものである。本書は戦争責任について考えるという思想的作業にとって何が大切であるかを教えてくれる重要な本である。
(07/7/18記)