ベートーヴェン:交響曲第5番(1947年5月27日盤) POCG-2362
★★★★★

 僕の人生を変えた一枚。このCDに出逢っていなければ、僕の人生には音楽という要素がすっぽり抜け落ちていただろう。

 本当に偶然の出逢いだった。確か高二の時だったと思うが、当時日課になっていた新宿のヨドバシカメラ散策をしていたときに、CD売り場で再販切れセールの棚に並んでいた当盤を見つけたのだ。クラシックを聴き始めたばかりで、フルトヴェングラーの名前は知っていたが、どういう指揮者かは全く知らなかった。安かったのと、ただごとでないジャケットの雰囲気に押されて購入したのである。

 あらゆるところで語り尽くされている人類の至宝であるので、僕などがとやかく言えるものではない。とにかく音楽芸術の全てが詰まっている一枚である。

 とまあ、そんな堅苦しいことは抜きにしてただ虚心に耳を傾ければ、とにかく元気が出てくる。分厚い低弦とティンパニの響き、めくるめくクレッシェンドとアッチェレランド。スピーカーから溢れ出す激情に身をゆだねれば、よどんだ日常と闘うためのエネルギーが湧いてくる。終楽章コーダの、荒れ狂うアッチェレランドは憂鬱質の僕の元気の源である。

 クラシックは堅苦しくて眠くなるものと思っている向きにぜひ聴いてもらいたい一枚。ロックなんかよりはるかに激しく熱い音楽であることが分かってもらえるはずだ。

(07/3/3記)

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