家庭交響曲 PolyGram France(輸入盤)   ★★★

 戦時中のライブ盤であるが、正気の沙汰とは思えない。第4楽章まではまずまず普通なのだが、終楽章になってのっけからキレ始める。これが本当に家庭の描写なのだとしたら、一体どういう家庭なんだよという感じだ。父親は合成麻薬、母親はアルコール、息子は覚醒剤、娘はトルエンのそれぞれ中毒の家庭とかいうなら、確かにこんなふうになるだろう。

 とにかくハーモニーもクソもない。調和も何もなく金管やら打楽器が最強奏される。9:20以降辺りからが特にすごい。シンバルなんかおサルのおもちゃが叩いているみたいだ。下手くそというより、本当に各奏者がキレているという表現がぴったりだ。

 戦時下の極限状態が、指揮者とオケのこういう演奏を強いたのだろう。音楽としての完成度はともかくとして、戦中のライブには時としてこういうブチ切れ演奏があって面白い。

 この演奏の際のフルトヴェングラーの指揮ぶりはどんなものだったのか、見てみたいものである。

(07/4/13記)

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