ベートーヴェン:交響曲第9番(1937年盤) TOCE-3729
★★★
これは、エリザベス2世の前のイギリス国王、ジョージ6世の戴冠祝賀演奏会のライブ録音である。1937年のライブということで、いわば歴史的録音の部類に入ると思うが、意外と音質はしっかりしていて、それなりの再生装置にかければ十分鑑賞に堪える。
50代に入ったばかりのフルトヴェングラーの演奏の若々しさには眼を見張るものがある。バイロイト盤なんかと比較すると、青い、とすら言えるかもしれない。5年後の演奏もすごいが、この演奏の直接的な迫力はそれに輪をかけたものである。特にフィナーレのコーダの猛スピードは、正気の沙汰とも思えない(様々な評には、「こんなテンポでは弾けるわけがない」とされているが、僕にはバイロイト盤よりはよっぽど揃っているように聞こえる)。これで録音がもう少しよければ、とんでもない名盤としてもてはやされたことだろう。
それにしても50代の演奏が青臭く聞こえるなんて、クラシックというのは何という音楽ジャンルなんだとつくづく思う。
(07/5/6記)