ブルックナー:交響曲第6番 MELCD1000720
★★☆

 僕はフルトヴェングラーの信奉者であるが、彼のブルックナーは全く評価できない。フルトヴェングラーの音楽は飽くなき人間の感情の表現であり、ベートーヴェンなどには実によく当てはまるが、そうでないものを表そうとする音楽にはまるで合わない。ブルックナーがいい例である。

 だから、7番とか8番は全く聴かない。やたらと一生懸命な姿が滑稽ですらある。しかしこの6番は、あまりのとんでも演奏ぶりと驚異的な録音の良さに、時折手に取る演奏である。

 聴くと言っても、後半の二楽章しか聴かない(そもそも第一楽章が欠落しているが)。やたらと金管がクリアで硬い録音と相まって、ほとんどベートーヴェンの音楽にしか聞こえない。音楽が熱いことこの上ないのだが、音楽自体が人間的な熱気を欲していないので、その齟齬が聴いていて何とも落ち着かない。随所に聴かれる金管の強奏は聴く者にどうしちゃったんだろうと思わせる。特にフィナーレのコーダの興奮は尋常ではない。

 戦時中の不安な神経を表していると言えば、確かにそうなのかもしれない。ひたすら落ち着かない気持ちにさせる演奏である。

(07/5/6記)

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