ベートーヴェン:交響曲第7番(1943年盤) OPK7002
★★★★★

 人間というのは音楽を通してここまでエネルギーを燃やし尽くせるものなのかと聴く者を圧倒するCDである。これほど音に生命が込められた音楽もあるまい。スピーカーから放たれる音が躍動している。

 テンポ・音量・各楽器のバランス全てが、音楽が求めているものを完璧に満たしている。そうあるべき音楽として演奏されている。今まさにベートーヴェンの音楽が創造されている瞬間がここにある。

 第一楽章のクライマックスや、第四楽章の激しさは、とても生身の人間が生み出しうるものとも思えない。どんどんエスカレートするアッチェレランドとクレッシェンドが主役の、猛スピードのリズムの狂宴は、ロックなんて生易しい音楽だと思わせるのに十分だ。なにしろ一人のカリスマに率いられた、百人の人間の狂気の進軍なのだから。

 無論、第二楽章の慟哭も狂おしいまでに美しい。しかしただ美しいだけではない。満月の下で流す、狂気を孕んだ涙の美しさだ。

 このCDは、小学校の音楽の授業で、「クラシックは退屈で眠くなるもの」とすり込まれてしまった人にまず聴いてもらいたい。ロックを遙かにしのぐ激しいビートに心躍ることだろう。

(07/4/28記)

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