田辺聖子:田辺聖子の小倉百人一首(角川文庫)
★★★☆
確か中2のときだったと思うが、古文の授業で百人一首を暗記するようにとの課題が出た。暗記物は不得手ではないが、ただ漠然と憶え込む努力をするよりは、ちゃんと個々の歌の意味内容を理解した上でのほうがいいと思い、本書を買い求めた。
当時の僕はもちろんガキではあったが、ガキにも分かる平易な内容のおかげで暗記はすすんだ。今でも10首ぐらいは諳んじることができる。
本書はただの訳書、解説書ではない。もちろん訳もついているが、アカデミックなものではなくて、おせいさんの言葉による実に平明なものである。歌が詠まれた背景が分かり易く解説されているのも、無学な者には大変うれしい。また、その歌だけにとどまらず、作者の他の歌や同時代の歌などを取り上げて、古典そのものに対する理解を深めてくれる。
本書を読めば、古典文学についての知識はあらかた頭に入ると言っても過言ではないと思う。しかもユーモアやウィットに富んで分かり易い。中学生に読んでもらいたい本である。
ちなみに、僕が一番好きな歌は、ベタベタだが権中納言敦忠の
「あひみての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり」
である。
(07/4/15記)