夕凪LOOP ★★☆
喫茶店のBGM。
久しぶりに聴き返して浮かんだ第一印象がこれ。明るくて耳に心地良いが、何も残らない。耳をそばだたせるものは何もなく、ただフワフワと頭の上を漂っていってしまう。
今までのアルバムには確かにあった坂本真綾の世界が、ここには微塵もない。いや、それを否定するところからこのアルバム作りが始まったのだから、そのこと自体は批難されるべきではない。問題なのはそれに代わる新たな音楽世界が全く見当たらないところにある。
試行錯誤の跡は見える。ただそれは単なる音楽の形をあれこれ変えてみただけで、小手先の出来事に過ぎない。きれいなだけの歌声からは何も伝わらない。
脳天気に明るい音楽なのに、聴いていて悲しくなってくる。もし彼女が今後もこういう音楽を目指しているのだとしたら、それは不幸である。少なくとも僕にとっては、素晴らしい音楽の作り手を失う、大変な不幸である。
(07/3/24記)