少年アリス ★★★★

 世評は高いし、僕自身も最初聴いたときはぶっ飛んだものだ。「スクラップ」「03」「光あれ」「おきてがみ」などの曲(つまり僕の大好きな曲)については、影を含んだ表現に深みが加わって、鳥肌物である。しかし、上手くなりすぎたがゆえの悲劇とでもいうのか、表情に色が付きすぎている感も否めない。それは特に「ちびっこフォーク」なんかに顕著だ。

 明らかに『Lucy』にはあったキラキラとした輝き、無垢な煌めきが失われている。『Lucy』では若さと上手さのバランスが取れていたのだが、当盤では上手さのほうに大きく傾斜してしまっている。しかし、言い換えれば歌の世界の深さという意味では無類である。どちらを取るかということでこのアルバムの評価は分かれるわけだが、僕自身は輝きのほうを取る。だから「うちゅうひこうしのうた」とか「まきばアリス!」なんかはその明るさが嘘くさく聞こえてしまい、僕は好かない。

 デビュー以来目指してきた表現が、行き着くところまできたという実感が真綾さん自身にもあったのだろう。そうであればこその次のアルバムだと思う。結果はともかく、世界の革新を決断したことについては、僕は大いに賞賛したいと思う。結果はともかく、である。

(07/3/18記)

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