宙組トップスター 和央ようかさんの想い出

 恐らく僕が今まで観てきた中で、一番年長までトップを張っていたスターさんだと思うのですが(轟悠さんは別格・笑)、一番の魅力だった少年っぽさを最後まで失わなかったところが彼女の凄さだと思っています。

 宝塚のスターとはいえ生身の人間なわけで、歳を重ねれば表情も変化するし、舞台人としての風格が良くも悪くもにじみ出てくるようになるものです。しかし、彼女だけは、ベテランとしての重々しさみたいなものを微塵も感じさせず、サヨナラ公演まで若々しく中性的な美しさを保ち続けました。舞台の上の姿をただ見ている分にはあまり気づきませんが、それは大変な才能だったと今さらながら思います。

 阪急側の期待も大きかったおかげもあって、記憶に残る舞台がいくつもあります。『エリザベート』しかり、『ファントム』しかり。彼女を追いかけて、生まれて初めて大劇場まで行ったのも、今となっては懐かしい想い出です。

 しかし、一番素晴らしかった舞台となれば、やはり『ネバー・セイ・グッドバイ』でしょう。前から2列目で観られた、そして2回も観られたという幸運も手伝って、強く心に焼き付いています。

 間近で見る彼女はやはり少年のようで、それは容貌だけではなく、立ち居振る舞い全てから感じられました。小池先生の手になる作品自体も、彼女の良さを最大限活かすべくよく練られていて、哀しい物語でしたが、タイトル通り明日へと希望をつなぐ光が見えるような終わり方で、清々しい感動を味わうことができました。

 宝塚のトップスターに求められるかっこよさとは、もちろん成熟した男性としてのそれなわけですが、彼女のように未成熟さが魅力となっていた人を他に知りません(普通は青臭さが先に立って鼻白むものです)。これは理屈以前の感性の問題であって、上手く説明することができないのですが、5人のトップスターの中で断トツの人気を保ち続けたことを考えれば、僕の個人的な感想ではなく、多くの人が感じていたことなのだと思います。

 2列目ともなると、気のせいでも妄想でもなく本当にバシバシ視線が合うのですが、アニメの少年キャラに見つめられているみたいで、妙にドキドキと萌えました。恐らくこんな快感はもう二度と味わえないでしょう。

07/6/24記

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