花組トップスター 真矢みきさんの想い出
今彼女は大人の女性を演じる女優さんとして活躍していますが、宝塚時代の彼女をよく知る人にとっては何となく違和感を禁じ得ないのではないのでしょうか。少なくとも僕はそうです。僕にとっての彼女は、「ウエストサイド物語」のトニーや、「エデンの東」のキャルなので、ヘアカラーのCMなんかに出ている彼女を見ると微苦笑がこぼれてしまいます(もちろん素敵な大人の女性なのですが)。
宝塚のトップスターとしてのみきちゃん(馴れ馴れしいながら、彼女はちゃん付けで呼ぶのが相応しいような気がします)は、ある意味不世出の存在だったと思います。あんなやんちゃな悪ガキみたいなスターはもう二度と出ないでしょう。かっこいいというよりはホントにカワイイ男の子という感じでした。
独特のハスキーな声、どうやってセットしているのかポワンポワンの前髪、ところどころで見せるイタズラっぽい表情、どれもがとてもキュートで僕は大好きでした。一般的な宝塚の男役の概念からは激しく逸脱していましたが、かなり人気がありましたから、みんな否応なしにみきちゃんの魅力に惹きつけられていたのでしょう。
例えばジャニーズJr.のメンバーなんかは、確かにきれいな少年ですが、やはり生身の、現実の男でしかありません。対して舞台の上のみきちゃんはまるで現実感がないというか、アニメに出てくる少年(それも女性の声優さんが声を当てているような)のようで、現実を忘れて夢の世界に連れて行ってくれるという意味で、やはり彼女は典型的なトップスターだったのだと思います。
「昔は良かった」的な話は意味がないので好きではないのですが、このころのトップスターはそれぞれに強烈な個性を持っていました。スターたるもの、少々見た目がいいだけではその資格はないと思います。何か一つ代名詞となりうるような特徴を持っていてこその「スター」だと思うのですが、どうも最近は人気の過熱ぶりに比して、トップの実力に関しては「?」であるような気がしてなりません。
(07/5/13記)