水樹奈々:GREAT ACTIVITY   ★★★☆

 僕は歌と音楽は別物だと思っている。歌に何より大切なのは、歌い手の声と、その声とメロディと言葉が表す世界であって、音楽性だとかいったものは二の次というか、あくまで添え物だと思っている。

 なので基本的に、どういうミュージシャンが参加しているとか、バックの演奏がどうだとかいうことには興味がない。もちろんアレンジや演奏が優れているに越したことはないが、一番不幸なのはいろいろと音楽をいじりすぎたために、中心となるべき歌を塗りつぶしてしまうことである。

 このアルバムは残念ながらそういう嫌いのある曲がちらほら見受けられる。「Orchestral Fantasia」などはその最たるものだと思う。奈々さんの声を聴きたいのに、余計な音が多くてせっかくの歌がこちらに伝わってこない憾みがある。「Bring it on!」なども、音をいじくりすぎて奈々さんの歌がストレートにこちらに響いてこない。

 『のだめ』の千秋ではないが、「わたしの声を聴け!」ぐらいの気合いでいいと思うし、十分にそれができるだけの才能の持ち主だと思う。なまじ音楽的な才能もあるだけに、いわゆる音楽性とかの方に走りたくなる気持ちも分からないではないけれども、奈々さんの一番の武器は声だと思うし、じっくりとその声を堪能したいものである。

 その意味では、「アオイイロ」や「chronicle of sky」などは奈々さんの声を楽しめる佳曲だと思う。単純な作りの歌ほど良いのである。

 音楽へのこだわりなどを否定するつもりはないが、歌にとってもっとも大切なのは声であり、それを活かす手段として音楽があるのである。その主従が転倒さえしなければ、奈々さんはもっと素晴らしい歌を聴かせてくれると思う。

07/12/18記

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