KRAFTWERK:TRANS EUROPE EXPRESS
★★★★

 クラフトワークの名は、以前タワレコで買い物をしたときについてきた過去の様々な名盤を紹介するチラシに載っていて、その変わった名前と、独特のアルバムジャケットが眼を惹いたために頭の片隅に残っていた。ある日、たまには普段聴かないような音楽を聴いてみようとTSUTAYAに出掛け、ふと思い立って借りてきたのが当盤である。

 一曲目、「EUROPE ENDLESS」でもうノックアウトだ。ただ一言、「カッケー!」。こんなにクールな音楽があるとはそれまで知らなかった。機械が奏でる音楽に血など通っていないはず。なのにちゃんと体温を感じる音楽なのである。でもクラシックのように生臭くはない。どうにも不思議な感じだ。

 音を奏でるツールは機械だが、だからといって非人間的な世界を表現しようとしているわけではない。機械文明を描写した音楽ではあるが、それはあくまで生身の人間が作り上げたものとして描かれている。それが無機質な音の羅列からほのかに立ち上る有機的な熱の正体だろう。

 そもそも、人が音楽を生み出してより、人はその時代の最新の楽器を用いて音楽を創ってきた。20世紀後半の人間が電子楽器を使って音楽を創るというのは、いたって自然な音楽の生成過程である。

 KRAFTWERKの魅力は、ヴォイスにもある。ドイツ訛りの平板な発音の英語が、音楽の持つ静かな情熱と相まって実に耳に心地良い。癒される。

 「SHOW ROOM DAMMIES」なんかも良いが、「FRANZ SCHUBERT」から「ENDLESS ENDLESS」に続くシークエンスが好きだ。無機質なロマンチシズムとでもいうべき優しい調べにうっとりと酔わされてしまう。

(07/4/28記)

戻る