KRAFTWERK:AUTOBAHN
★★★★

 『TRANS EUROPA EXPRESS』があまりにもカッコ良かったのを受けて、デビューアルバムである本作にも手を伸ばした。そして、期待を裏切らず、本作もめちゃめちゃクールだった。

 まずは何と言っても表題作である。27分を超える大作であるが、冗長さを感じさせない。アナログシンセサイザーの重ね録りによって作り込まれているわけだが、古くささも感じさせない。もちろん最新の打ち込みの音と比べれば全然違うが、「違う」のであって「古い」わけではない。

 ベースラインが刻む軽やかなリズム、涼しげなドイツ語によるボイス、機械音に重なる叙情的なフルート。高速道路を自動車で飛ばすという、新時代の娯楽の様子を耳に心地良い音楽に巧みに仕上げている。

 恐らく1972年の発表当時は、怖ろしくとんがった音楽だったのだと思う。聴いたこともない音を理解できない人も多かったに違いない。しかし、テクノやトランスを経てきた我々の耳には、この音楽はとても優しい、メロディアスな音楽として聞こえる。

 自動車社会の到来によって我々は交通事故や排ガスによる大気汚染といった問題に直面することとなったが、生活は飛躍的に便利になり、豊かになった。クラフトワークの音楽は、基本的に機械文明の発達の明るい側面を捉えた音楽であると思う。人間が抱える問題を、難しい顔をして訴えるのも大切なことだとは思うが、日常に疲れているときには、これぐらい前向きな音楽の方が癒されていい。

 つくづく、クラフトワークの音楽は癒し系だと思う。

(07/8/5記)

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