ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱つき」
カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団他
★★
下品な人間ではないつもりだが、お上品な人間でもない。例えば食べ物も、味の濃いしつこいものが好きだ。とんかつの千キャベツにもソースをかけて食うような人間だ。シュークリームといえばコージーコーナーのジャンボシュークリームが一番好きだ。
音楽も、人間の持つ情念というかエネルギーがダイレクトに表現された、分かりやすいものがいい。なので、この曲を「人類の友愛を崇高に謳った」なんて解釈をされてしまうと、途端に腰が引けてしまう。いや、それならまだマシで、書かれた音符をただ音として結晶化する「作業」に徹しられてしまっては、仮にその結晶がどんなに美しいものだとしても、僕にはちっとも良いものだとは思えない。
カラヤンという指揮者は、とにかくこの「作業」を完璧にこなす職人だったのではないかと思う。音楽の美しさは即ち音そのものの美しさであるという認識で、カラヤンの技に酔える人なら良いのだろうが、どこまでもクラシック音楽には分かり易いドラマを求める僕のような上品ではない人間にとっては、聴くだけムダな音の羅列である。
そもそもこの音楽は、暑苦しい音楽である。だから暑苦しい演奏が似つかわしい。理屈ではない。そう思う。
(07/4/23記)