あすま理彩:若君様のキケンな情事 (プラチナ文庫)
★★
僕はオリジナルのBLが嫌いなわけではない。高校生の頃は、ごとうしのぶの「タクミくん」シリーズや、吉原理恵子、斑鳩サハラなどを愛読していた(どんな男子高生だ!)。
ふとたまにはBLでも、と思って(どうしてこんなことを思ったのかは自分でも分からない)、書店でしばし物色をした揚げ句に買ったのがこれ。しかし、ちっとも萌えなかった。
作者の名誉のために言っておくと、これは一方的に僕が悪いのであって、作者のせいではない。たとえストーリーが出来の悪いAVの筋の部分みたいだったり、エッチシーンがあっさりしすぎて物足りなかったりしたとしても、作者は悪くないのだ。
ちゃんと自分が萌える本を選べなかった僕が悪いのだ。
オタクの本分とは、自分の嗜好を満たす作品を自らの嗅覚を頼りに探り当てることにある。僕は目下攻めは好きだが、こういうオレ様従者攻めは僕のストライクゾーンではない。オレ様な従者、というのは実に中途半端で、どっちかにしてくれ、と言いたくなってしまう。しかし、ボール球に手を出したのは僕の方なのだ。
この作者、この文庫にも数作品あるほか、他社でも結構作品を出しており、売れているようだ(僕の手許にある本も第3刷だ)。こういう甘々幸せ物を好むのはどういう読者層なのか、興味のあるところだ。
ところで、この文庫の版元は官能小説の老舗、フランス書院である。機を見るに鮮やか、というか、ツボを外さぬ商魂には舌を巻いてしまう。
(07/7/20記)