代案なり対案というものを事業者に承認させようと考えた場合、提案の時期は大きな問題となる。
物件担当者の一担当者としての社内での立場を考えれば分かることだが、折角ここまで、「非常識」とか「守銭奴」などとさげすまれながら、我慢に我慢を重ねて進めてきた事業を、壊したくはないと言う心理が行動なり判断の根本に働いている。
この問題を理解するためには、事業の進捗状況に合わせた基本的な手続きを考察する必要がある。
■事業の基本的手続き
一般的な開発事業は以下のような手続きを経る。この中で、彼らが彼らなりの苦労を重ねて進めてきた事業が、広く認められるのは建築確認の受理段階や、開発許可の取得段階である。
したがって、これら手続きを経ているかどうかによって、代案への対応は大きな分岐点を迎えることとなる。
①用地取得担当者による用地選定
②用地取得に係る社内稟議
③事業計画策定
④用地取得
⑤事業計画に係る社内稟議
⑥行政機関との事前協議
⑦関係機関協議
⑧事業計画の見直し
⑨行政機関協議及び関係機関の事実上の同意取付
⑩お知らせ看板設置
⑪地元説明会(場合により回数も不特定)
⑫開発許可申請(開発許可に係らないものは不要)
⑬開発許可
⑭建築確認申請
⑮建築確認(建築の許可)
⑯着工
⑰竣工
⑱販売
説明の必要すらないと思うが、担当者にとって、建築確認や開発許可は、最後の最後の山場であり、この段階での代案の提示には大きな可能性は期待できない。
出来得れば①用地選定の段階で代案を提示できれば、営利最優先の企業であればあるほど、代案を受け入れる可能性は大きいが、この段階で住民側は大きな危機感を抱いていないし(知らない人が例の空き地を見に来ている程度の認識)、注意でき得るほどのレベルにある地域コミュニティーというものを持っている地区も数少ない。
逆に言えば上記手続き以前で有れば方向修正の可能性も大きいため、代案の提示時期はできるだけ早い時期にという事になるであろう。
■担当者心理とトップの判断
この二つは言うまでもなく、全く異なる場合が少なくない。したがって、「伝えておきます」や「社内で検討します」という担当者の言葉は一切信用せず、「何が何でも直接トップに繋がる手だて」を講じる必要がある。
代案提示の時期を少々具体的に記述すれば、以下のそれぞれの段階で、右記の様な理由で代案受入の可能性が減少していく。
④用地取得(用地取得に係る税制優遇)
⑤事業計画に係る社内稟議(担当者の社内での立場への心配)
⑨行政機関協議及び関係機関の事実上の同意取付(行政のメンツへの配慮)
したがって、「⑩お知らせ看板設置」や「⑪地元説明会」の段階は、担当者としては「この仕切で事業をします」という意思表示に他ならず、この段階からの代案提示はトップにぶつける以外に効力を発揮することはないと考えて良いであろう。
住民の立場からは、かなり厳しい条件を突きつけられたように感じるかも知れないが、これが現実であり、だからこそ住環境保全のための街づくり活動や規制誘導方策策定が必要となるのである。
■連絡先と費用負担
相談は建築・都市よろず問題相談所まで。当初のEメールによる相談は無料(メールはトップ頁からお願いします)。