『クラスターの科学−機能性ナノ構造体の創成−』
西 信之・佃 達哉・斉藤真司・矢ヶ崎琢磨著
A5判 164頁 定価 (本体2200円＋税)
ISBN978-4-946553-38-7 C3043
本書では、できるだけ多くの読者に興味を持って頂けるような内容、特に身の回りの重要な問題として、水、アルコール、酢酸といった分子の集団の世
界の不思議を紹介し、ここで得られた、物質のミクロスコピックな相分離現象を、金属と炭素の化合物、特にアセチリドに応用し、金属と炭素、あるいは金属と
有機高分子へのナノメートルレベルでの構造発生と、これによって発生する特性を利用した様々な応用例を紹介してある。
クラスター科学の発展を志した著者たちの研究の中なら出た成果を少しでも多くの皆さんに紹介し、科学的な理解を深めて頂くと同時に、新物質やデバイスの開発を目指す方々に何らかの手がかりを見つけて頂きたいという願いを持ってまとめられたものである。
《主要項目》
第１章 クラスターとは
気体・液体・固体、そしてクラスター／気相クラスターと液相クラスター：Castleman教授との論争／超音波で“焼酎”を作る：焼酎のような純米酒「霧造り生」
第２章 独立のクラスター（気相に存在するクラスター）
Size is everything.「サイズがすべてを決める。」／気相の水分子クラスター
第３章 液体中のクラスター
分子間の結合状態を見る：低振動数ラマン散乱スペクトル／水のO‐H伸縮振動数の変化に
よって水の結合状態を知る／水の結合の様子（X線回折によって得られる動径分布関数）／水とエタノールは分子レベルで完全に混合するのか／溶液を霧化し、
その断熱膨張破裂によってクラスターを見る／液体中での混合の一般則／酢の臭い：酢と油を混ぜるときつい臭いがするのはなぜ／酢酸の会合体／水溶液中の酢
酸／酢酸が水溶液中で見せる思いがけない会合構造
第４章 水や水溶液の中のクラスター
水の構造と運動／水溶液の中のクラスター／超臨界状態の水
第５章 固体中の物質の混合と分離：ナノ構造を創る
金属炭素クラスター“MetCar”／銅アセチリドナノワイヤーから炭素被覆銅ナノケー
ブルへ／炭素被覆銅ナノワイヤーの酸素センサーとしての機能／銅24量体分子を用いた銅ナノシートのリソグラフ回路描画／1次元超長分子から銀ナノ粒子疑
似1次元ドット列を作る／空気中で安定な微小磁石：炭素被覆-鉄・コバルト-ナノ結晶／偏析が起こる理由：原理的な考察
第６章 金属原子が作るクラスター
真空中に孤立した金属クラスター／化学物質としての金属クラスター
第７章 金属アセチリドから炭素ナノ構造体を作る
爆発反応を制御しグラファイト性炭素ナノ構造体を創成／極薄のグラフェン壁を持つナノ細
孔性炭素樹状体：ＭＣＮＤ／ＭＣＮＤは、グラフェン壁からできている／ＭＣＮＤのグラフェン壁上に金属クラスターを坦持する／グラフェン壁を持った空孔に
金属が引き込まれる／スーパーキャパシタ／ＭＣＮＤを電極とするスーパーキャパシタ／ＭＣＮＤの有効な利用法／ＭＣＮＤを用いたリチウムイオンキャパシタ
電極／嵩高いＭＣＮＤの潤滑剤としての可能性
米田出版 発行