聖女と聖人
暑い夏の日差しの中を貴婦人が歩いている
日傘のレースが上気した顔に影をつくり
涼しい風が白いブラウスと歩調を合わせ
スカートから出た膝が聖らかな足を支えている
緑深い夏の草花もあでやかなダリアも
たおやかな八重の芙蓉もこの美しさには勝てない
眼差しは優しく周囲を眺め口紅は愛らしい
歩調はゆるぎなく聖女の行進のようになめらか
でもその心の奥底に虚しさが隠されている
この道を歩いてもどこにも行き着く場所はない
歩くだけで年を重ね芙蓉のように萎れてしまう
一体誰がこの体を受け止めてくれるのかしら
聖人は自分が陰茎を持っているのを知っているが
貴婦人が陰核を持っているのを信じることができない
蜂のように眼を閉じて花粉を探せばいいのだけど
外見のあまりの美しさに驚き体が自由に動かない
平成14年7月13日
陽平