■名誉ある放棄 2005/07/22
権利としての戦争とは王位継承権、領土の割譲、賠償金の請求、権益の確保を要求するものです。9条1項に使用されている放棄するという英語はRenounceであり、これは王位継承権や財産権を自発的に放棄するという意味です。同じ放棄するという英語でAbandonがありますが、これは見捨てる、あきらめるという意味です。9条1項の英語表現の直訳としては「日本の人々は国の最高の権利としての戦争を永久に放棄する」ということになります。放棄するという英語表現がAbandonではなく、Renounceであることについて考察する必要があります。多くの日本人は戦争放棄をAbandonの意味で感じて来たように思います。最高の権利はSovereign
rightが使用されており、王位および独立国の最高の権利を意味します。
9条2項に「国の交戦権は、これを認めない。」という表現があり。わかりにくくなっていますが、英語表現を直訳すると「国の好戦性の権利は認可されないだろう。」ということになります。1項では国の英語表現は「the
nation」ですが、2項では「the state」が使用されています。私自身、今まで、9条の戦争放棄や交戦権を漢字表現で理解して、理念や思想として考えてきましたが、9条の英語表現を読んだとき、そのニュアンスが異なることに驚きました。そして漢字が中国からもたらされたのは1500年ほど前で、英語はペリーとの交渉のときからでしょうから、150年ほどしか経っていませんが、いずれにしろ日本以外のところから来たものであり、ニュアンスが異なっていれば、自分自身で真の意味を考えるべきだと思いました。
1項のRenounceには、ヨーロッパの歴史の中で何度も繰り返された王位継承権戦争、領土権戦争の名誉と栄光の影にある苦痛と悲惨を思い、手強かった日本軍および日本国民に対する敬意と友情を示しているように感じられます。
2項のthe stateには、日本国民は好戦的ではないが、日本政府は好戦的であった、1項で放棄されている権利としての戦争は好戦性によってなされるので、日本政府の好戦性の権利は将来に渡って国際社会に認可されないだろうと1項に矛盾なく追記されていると思います。その意味で、2項は「前項の目的を達成するため」となっており、9条1項、2項合わせて、権利としての戦争を王位継承権を放棄するように名誉ある放棄をしていることになります。
「国の交戦権は、これを認めない。」という表現であっても、戦争の定義として、国際法で宣戦布告によって発生するものとなっているので、宣戦布告する権利を認めないということであり、権利としての戦争を放棄するという1項と矛盾なく規定されていることになります。
従って、「9条2項を改正し、自衛のための武力組織を「自衛軍」と名付け、軍隊であることを明確に位置づけた。」という自民党新憲法起草委員会は9条2項を誤解していることになります。