心の空洞


宇宙が生まれる前の広大な空漠の地平線

針の先よりも小さく凝縮して、全宇宙のすべてを包み込む無の世界

すべての闇が集まり、すべての光が集まる

すべてが無であり、無がすべてである

その時の宇宙の記憶が清冽な水となり、心の空洞を流れ続ける

この世界のすべての良いものが押し込められた何もない空虚な空間から

かすかな音色が響き、光が洩れ出て来る

闇は開かれ、輝く光が生まれたばかりの無垢な世界を照らし出す

そして新しい生命を生んだ空洞は再び闇に閉ざされ、静かな眠りに入る



                       1996年12月31日 玉川陽平