96.残念ね

ビルの谷間に落ちた百合の花
高貴な白がうす汚れ、雑踏の誰もが振り返らない
赤錆びた夕日が通り過ぎる男の性急な靴を照らし
女の愛に飢えたミニスカートを追いかける

百合は時間の中に取り残され、失われた泉を思い出している
谷間に咲き乱れる花が百合を賛美し、大きな木が百合を守っていた
白い花は純潔の王女のように誇らしく、花の露は真珠のように輝いていた

今は誰も高貴な白に気づかない
この百合の花が人の目に止まり、再び美しさに輝くことができれば
そして、生きるための場所を与えられれば
懺悔した私は再び生きて、少しばかりの光に輝くことができると思う

今、私の生きる場所はどこにもない
針の先ほどもない
天使は針の先に何人もいることができるのに

誰か気づいて欲しい
私にだって少しの価値はあると思う
でも、誰も立ち止まらなかった
誰も百合の美しさに気づかなかった

「何と言えばいいのかしら、・・・残念ね」
愛する女はみんなに愛されていた
薔薇のように輝く瞬間と苦悩の中に沈む時間の間に深い振幅を持っていた

僕は理解できなかった
その心が雑踏の中に落ちた百合のように孤独と絶望の中で苦しんでいることを
そして答えた
「残念と感じなくていいよ、その百合の花に気づかせればいいよ」

女の心は閉じた
「残念だね、僕は気づくかもしれないけど」
と言えればよかった
「残念ね」と言って、愛する女は去ってしまった