93.寂寥
僕達は命の海の中にいる
DNAは蛋白質を作り
DNA合成酸素という蛋白質はDNAを合成する
大腸菌の中に他のDNAを入れれば相応した蛋白質を作る
メタンガスとアンモニアに光を当てて作ったアミノ酸とRNAで
生命の発振を開始させるのは困難
過去の地球表面のどのような条件のもとで
生命の発振が開始されたかを知るのは難しい
もし、その発振の条件の生じる確率が非常に小さいとしたら
僕達は宇宙の一千億の星の中で唯一の生命体かも知れない
百五十億光年の広がりの中で、こんなに小さな所で、唯一の生命
もし、僕達が知っている以上の宇宙の秘密を誰もが知らないとしたら
もし、宇宙が僕達の存在に何の関係もなく存在しているとしたら
もし、宇宙自身が宇宙の存在の秘密を知らないとしたら
一体、誰が宇宙の発振を開始させたのだろう
一体、誰が生命の息吹を開始させたのだろう
地球上のあらゆる生命がRNAとDNA、そして二十種類のアミノ酸を用いて
同じ方法で生きていて、複製を繰り返している
つまり、地球には、一匹の時空生命がいるだけだ
一匹しかいない
それは神かも知れない
ヒトにとって辛いことだが
エイズもヒトに近い神の体の一部かも知れない
もし、地球に一匹しかいない時空生命が、この広い宇宙の中で一匹だとしたら
ここでしか愛の発振が立ち上がらなかったとしたら
その孤独と寂寥はほとんど耐え難い
僕達以上に誰かがこの宇宙の秘密を知っていて欲しい
僕達は何処から来て、何処に行くのか
僕達は愛によって済われるが
この一匹の時空生命は僕達と同じように寿命を持つものかどうか
死んだ後、又、何処かで生まれるものかどうか
何処かで、再び愛が立ち上がるものかどうか
僕は若い女とキスをしている、この寂寥から逃れる為に
その舌と舌の接触は、愛の発振の予感で、酔わせてくれる
でも、多分発振しない、束の間の幸福