74.二子玉川園

象が歩いた多摩川を、五月の風が吹き渡り
散歩の親子が蝶を追い、ボールを追う若者や、日光浴の老夫婦
恋人達は手を繋ぎ未来を信じて愛を囁く

川底は浅く、石にぶつかり、水が煌めく
川辺の草は短く、木々は疎らに立ち盡す

象がいた頃の多摩川は、水深く、長い草は風に靡き
近くの森には沢山の動物がいた

私はあなたを愛しているけど、私は自由
子供と遊ぶ蝶のように、水遊びをする雌の象のように
あなたは私を愛しているけど、あなたも自由
川を登る鮎のように、森を歩く雄の象のように

出会った二つの魂が、水の上で輝き散乱する光のように
過去の二つ軌跡が、青山で出会い、二子玉川園で離れ去る
恋する象達が、水を背中に掛け合ったときと同じように
多摩川は、象の恋と僕の恋を海に運んで行った