57.罪の女

幼いイエスを抱いたマリア様に懺悔した
体を汚して許して下さい
マリア様のように聖らかになりたい

許されるわけはないのですがお許し下さい
悔い改めてそれをやめたいのですがやめられない
罪だとは思うが悪だとは思えない
時には善だとも思う

でも懺悔せずにはいられない
聖らかな妹に会い一緒に「ローマの休日」を見て感動し
その後、この罪の世界に早く帰りたかった

戯れに純粋な恋する男を傷つけてしまった
優しく冷たい拒絶に
深い愛を告げて旅立って行った

その償いの為に自分を罰する為にこの罪を犯す
悪でもない善でもない
この罪の中に安らぎがある

罪の中に落ちた嘆きのマリア
屈辱の中に呷く誇り高いアルテミス
鼠をミッキーマウスと思う夢見るビーナス

イエスの足に接吻して香油を塗った罪の女は多く愛したから許された
その愛の擬態は本当の愛ではないとしても罪ではない
罪だとしてもぎりぎりの跳躍
咲いた花の種が空中を飛ぶような愛の飛翔

あなたがたのうち罪のない者がまず石を投げよ
あなたがたのうち愛のない者がまず石を投げよ

この二つの言葉が同じ結果を得るとしたら
罪と愛とは同義であり
僕達は罪の海の中にいる
罪の値が死だとしたら愛の値も死

殺すな
姦淫するな
盗むな

この中で殺すな、盗むなは自明だが姦淫だけは特殊な罪
妄りに愛した罪
愛の擬態をした罪

熱いシャワーを浴びれば
生まれたばかりのビーナスのように
綺麗になるのに
体を汚したと言う罪

自分の腸わたはほんの少しで腹一杯に卵を抱えた鰊には
妄りに愛することが生きることという訓えがあるかも知れない
鳥が空を飛ぶように魚が海を泳ぐように
自由に愛の海を渡ればいいよ