45.時間の行程

古への奈良の都の八重桜と
伊勢大輔が高らかに歌ったとき
三百年の昔の匂いを九重の下に蘇らせた

芭蕉が梅若葉丸子の宿と呟いたのは
三百年の昔だが
同じ場所に立つと目の前にいるように感じる

数百年の時間の行程の中で
梅を友と思い
桜を佳き人を思う心は変わらない

空間と時間はそれ程異なった概念ではない
その意味で、存在と時間という定式は
時間に対する思いが強過ぎる

存在自体が空間と時間を内包しているので
空間の距離と同様に
時間の行程も直接的に測ることができる