44.梅
梅の香りが春浅き夜を伝わって来る
白い花が溶けるように浮かび
幽明の境に導く
梅は
僕がいて香りを喜び姿を愛でるのを知っている
大宰府の道真公が梅を友とした時
梅も道真公を友とした
梅は
隣の梅にこの香りを伝え、花の姿を見せているのではない
香りと姿を喜ぶのは鶯と僕だ
そして蜜蜂だ
梅は
鏡を持っていない、そして香りも嗅がない
でも、愛によってこれほどに粧うことができる
僕が愛していると同じように
梅も僕を愛している
僕が愛によって生かされていると同じように
梅も愛によって生かされている