39.文化と文明

先端技術の研究会
数十名の技術者の新技術発表
真剣な質疑応答
相手の発表の問題点に対する明確な指摘

自己の技術の優越を誇示し
勝負に対する強い競争意識
勝者の傲慢と敗者の弱気がはっきり示され
思いやり等という余計な感情は全くなく
男らしい強さに満ちていた

光学系の最適設計
赤、緑、青の三色の色再現性、色分離合成
先端技術に対する力強い集中力が快い感情をもたらし
全員が男であることを喜び
文明の進展とそれに参加することに酔っていた

研究会が終り、男達が帰った後
受付にいた女性が三人、帰り支度を始めた
化粧は美しく、口紅は鮮やかで
二人が同じような真っ赤なオーバー、一人が青いコート
デートかパーティに行くように顔を上気させていた

今までの色再現性に関する長い議論が何の価値もなく
文明の創造を男がしたと言うのなら
文化の創造は女がしたんだと主張していた

オデュッセウスが文明をかけた戦争で
トロイの木馬を作っているときに
ペネロペは
決して終わることのない美しい織物を織り
営々と文化を創造していた
文化がなければ生きる価値がない