24.プラタナス U
プラタナスよ、僕はおまえになりたい
クセルクセスが崇拝したプラタナスの大樹
リュディア(小アジア)の地で
枝々に黄金の腕輪や首飾りをつけて敬意を表し
不死隊の一人を世話係にして保護させた
女や少年を愛するように愛人にしたかった訳ではない
成熟した恋する男として敬意を表した
ピカソのようにドン・キホーテのように恋する男
斑模様の幹は樹皮が剥れ、瘤ができ
大地深く根を張って、堅牢固として
よく繁った枝や葉を支えている
葉は大きくて平たく三つに大きく裂け
残り二つは小指のように小さく裂けて
男の手の平のように力強い
ローマ人はクセルクセスが黄金の飾りをぶら下げたことを
愚かな事だと嘲笑ったが
実はローマ人もプラタナスを敬愛していた
よく繁った葉を吹き抜ける風と
広い木陰を愛していた
ガリアの地であるパリにも沢山植えられている
日本には明治時代に始めて来て、よく植えられた
山伏の首にかける鈴懸に似ているので鈴懸の木と言われた
男に愛される木だ
小アジアに自生しているものがあると書かれているが
それこそがクセルクセスが愛したプラタナスの孫か曾孫だ
千年ぐらいは生きているだろう
緑一杯の葉の中に黄色が混じると
秋の風の中で黄金のように新鮮だ
クセルクセスは荒野に宿営して、終日眺めた
僕だって、パリでも東京でも、
沢山の葉をつけて、自由に枝を伸ばしたプラタナスを
青い空を背景に恋人のように飽かず眺める