21.赤いブーツ
十二月の寒い夜
空一杯に星があった
コートのポケットに手を入れて
体を縮めて歩いていた
隣りで若い女が
青いコートに身を包み
寒そうに体を震わせていた
突然、「寒い。」と言って
僕のコートのポケットに
かわいい手が入って来た
少し暖かくなっていた僕の手で
冷たい手を一生懸命暖めた
絶望の魂に愛が訪れるのは
こんなにも突然なのかと驚いた
寒さに屈めていた背を伸ばし
星を見上げて
どの星から来たのですか
と思わず聞きたくなった
若い女は何もなかったように
星が綺麗ねと言って
コートの中の手を軽く握った
握られた二つの手は暖かくなり
愛が二人を包み
冷たい風も祝福するように頬を撫でた
愛の天使が彼女を送ったのか
彼女自身が天使なのか
僕には分からない
赤いブーツが靴音を立てて
風の中を歩いていた