3.形而上的華麗な防御の連鎖

海を渡るオオカバマダラ蝶の群れ
美しい羽が空と海の間を華麗に漂う
しかし、幼虫のときに毒草を食べたので
柔らかい腹に毒がある

目ざとい鳥が蝶の群れを襲い、毒に倒れる
鳥の群れはその蝶の不味さと仲間の死を痛切に感じ
鋭い目で毒蝶の羽の華麗な色模様を識別する
そして、蝶の群れと鳥の群れの間に平和が訪れる
    
オオカバマダラ蝶の羽のオレンジ色と黒と白の斑紋
それを真似た擬態者のチャイロイチモンジ蝶がいる
幼虫のとき毒草は食べず、さまざまな木の葉を食べる
そのため成虫は至極美味

チャイロイチモンジ蝶の擬態度が鳥の選別眼を超えたとき
鳥はもはやチャイロイチモンジ蝶を食べない
そして、チャイロイチモンジ蝶は繁殖する
鳥は毒を持つオオカバマダラ蝶ばかりになったと嘆息する

ある日、勇気のあるカケスが毒蝶を食べ
それがチャイロイチモンジ蝶であれば、至極美味
オオカバマダラ蝶であれば、毒の不味さに七転八倒
不味ければ吐き出す覚悟で、2対1なら賭けるだろう

擬態者のせいで、鳥に襲われると気づいたオオカバマダラ蝶
羽の色模様を変える進化の圧力が加わる
進化の道具箱から取り出した容易化された突然変異と
自然淘汰のおかげで、鳥が再び毒蝶の色模様を学習してくれる

オオカバマダラ蝶の色模様が変わったので
チャイロイチモンジ蝶は再び鳥の餌食となる
そして羽の色模様を毒蝶に真似、自然淘汰で擬態度が上がる
色は精妙に模様は微細になり、鳥の識別能力は進化する

この進化の圧力は形而上的生死の認識と
華麗な防御の連鎖によって成立する
生命全体が防御の連鎖であり、攻撃は防御の連鎖に内包され
鳥の攻撃のように単に生への意志という防御の一種