25.選ばれた生命
晩秋の青空の中に年を経た銀杏が数本
金色の葉に蔽われた大きな幹を
揺るぎなく聳えさせている
蒼穹と銀杏の黄金色が天空の伽藍のように見えて
ゆっくりと落ちてくる扇形の葉の一枚一枚に
神の戒律が書かれており、地上に到達するまでに
朗々と読み上げられているようだ
銀杏は二億五千万年前からこの姿のままで存在を続け
神が自分の姿に似たものとして銀杏を選んだために
これほど永く姿を変えることなく生きているのだろうか
今、神は再び人よりも銀杏を選ぶかもしれない
毛のない裸の猿として人が出現したのは六百万年前であり
その姿の変化速度は非常に大きい、そして今
知性がかなりの段階に到達した時点で神に選ばれたとしたら
人はこの姿のままで一億年以上存続することができるだろうか
神が書いた単純な戒律を守ることができるだろうか
銀杏が守り続けて、扇形の落ち葉に書いてあるかのような
愛せ、祈れ、捧げよ、憎むな、倣るな、貪るな